誰かのウンチは、他の人にとっては宝物。
イギリスの科学者たちが、絶滅危惧種の動物のウンチから抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」に対抗できるウイルスを発見しました。しかも動物園で。動物のウンチだらけの動物園は、宝の山なのかもしれません。
研究チームは、このウイルスが特に糖尿病による足潰瘍の原因である細菌に対して効果的であると考えているようです。
抗微生物薬耐性は、現代における最も緊急の公衆衛生問題のひとつなんです。今日、世界中で年間100万人以上の死亡が、薬の効かないスーパー耐性菌(主に細菌ですが、一部のウイルスや菌も含まれます)によって引き起こされていると考えられていて、2050年までその数は年間1000万人に増加する可能性があると言われています。
絶滅危惧種のウンチから発見
多くの科学者グループが、これらスーパー耐性菌を撃退できる新しい治療法を開発するために努力を重ねています。イギリスのシェフィールド大学の研究者たちもそのグループのひとつ。
スーパー耐性菌に勝つために、シェフィールド大学の研究グループはイギリスのヨークシャー野生動物公園と提携し、動物公園内で生活しているさまざまな絶滅危惧種の動物の糞便サンプルを調べました。
そして、これらのサンプルの中に、細菌を自然に捕食する可能性のある重要なバクテリオファージ(細菌に感染して増殖するウイルス)が含まれていたことがわかりました。
バクテリオファージは、医療の現場では細菌感染症を治療するために時折使用されていますが、最近になって本格的に注目されるようになりました。
特定の細菌に対して適切なファージを見つけて培養する「ファージ療法」は、従来の抗生物質に耐性のある感染症の治療に効果があることが示されています。
また、ウイルスは一般的に自分の宿主に選り好みをするため、ファージは人間には無害だと考えられています。
薬が効かないスーパー耐性菌
シェフィールド大学の研究グループは、糖尿病患者の足潰瘍を引き起こす、または悪化させることで知られている細菌をターゲットにできるファージを見つけたとのこと。
こういった潰瘍は糖尿病患者の約15%〜25%に現れる一般的な合併症です。抗生物質で治療するのがむずかしく、場合によっては入院や患部の切断につながることさえあります。
研究グループのひとりで分子微生物学者のGraham Stafford氏は
やはり臭いはありますが、絶滅危惧種の糞便が抗生物質に耐性のある感染菌を殺す鍵となる可能性があることが判明しました。
これまでに、ギニアヒヒ、キリン、キツネザル、ヴィサヤンヒゲイノシシ、そしてビントロングから抗菌ウイルスを見つけ出すことに成功しています。
足先や脚、足の指のを切断しなくてはならない患者のためにこのウイルスを利用して有効な治療法を見つけるために精力的に取り組んでいます。
と大学からの発表でコメントしています。
ウンチからのファージが本当にスーパー耐性菌を撃退するために使用できるかどうかには、さらなる研究や実験が必要となります。
しかし、この研究チームの実験が成功した場合、このウイルスを傷口塗るだけで治療できるようになるようです。
またStafford氏は
絶滅危惧種がこんなにポジティブでかつパワフルな目的に貢献しているのは喜ばしいことです。絶滅危惧種の保護をさらに強化していく理由ができました。
新しい感染症に対する新しい治療法の可能性を含んでおり、この発見は、この分野での氷山の一角でこれからまだまだ可能性が広がっていくと信じています。
と話しています。