「急いては事を仕損じる」…かも。
イーロン・マスク氏は、X(旧Twitter)を中国発SNSのWeChatのような 「万能アプリ」にすべく着々と変革をすすめています。しかし、どうもXは怪しげなデータ収集(?)にまで乗り出している様子。今週、同社はプライバシーポリシーを改定し、「生体認証情報」と「求人応募および推薦」に関する規定を盛り込みました。
X (本当はマスク氏の意図に反してTwitterと呼びたいのですが)はあくまで本人の同意に基づいて、安全・セキュリティ・識別目的のために「ユーザの生体情報を収集することがある」としています。生体情報とはいったい何なのか、詳細は示されておらず、米ギズモードが具体的な内容について同社に質問してみましたが、今のところ回答はありません。
あらたな認証制度の導入準備?
おそらくX側は有料の青い認証バッジに続き、あらたな「認証マーク」を追加しようとしていると思われます。最近、Xは米政府発行のIDを用いたユーザ認証をテストしており、あるアプリ研究者は「この認証には“最大30日間 生体情報を保存する”ことへの同意も含まれていた」と明かしています。このIDには顔認証も含まれ、それが第三者の企業に渡る可能性もあります。
とはいえ、認証と引き換えに生体情を提供させる企業は、Xだけではありません。MetaのInstagramは昨年、イギリスのユーザ向けにセルフィーによる年齢認証システムを導入しています。また、FacebookとInstagramはいずれも政府発行の身分証明書を提出したユーザ向けに、独自の青い認証マークを提供しています。ちなみに、なりすまし防止のためにはさらなる課金が必要です。
夢の「万能アプリ」に向けて着々と改革
さらにXは今、「潜在的に向いている仕事を推薦するため」、ユーザの職歴や学歴、求職履歴を収集しようとしています。そして、ユーザが応募する先の事業主とこれらの情報を共有する、とも言っています。Xがユーザの投稿履歴やほかの情報まで潜在的な雇用主と共有するかどうかは不明ですが、どうもマスク氏はXをビジネス特化型SNSのLinkedInのような存在にしたいようです。
Xを「優秀な人材と出逢える場」と考える企業や雇用主はめったにいませんが、マスク氏は「求職者側は多くの個人データをすすんで提供するだろう」と考え、自身の長年の夢である万能アプリを作る上で、十分な糧となる情報が集まると期待している様子。
億万長者でもあるマスク氏は、Xに株式取引を導入しようとしています。また、リンダ・ヤッカリーノCEOは以前、Xに送金サービスやビデオ通話などのTwitterっぽくないアイデアを追加すると話していました。
Twitterらしさを失いつつ、変革は難航?
マスク氏はTwitterの「Twitterらしい」機能のほとんどを次々に排除している様子。しかし、かつて著名人向けだった無料の青い認証バッジを、サブスク制の認証システムに移行する作業は難航しているようです。
ここ数カ月、不正認証による偽物の数は落ち着いたものの、青い認証バッジはマスク氏の「お人好し」(もしくはもっと悪い言葉)をあらわす代名詞になりました。それ以来、マスク氏は認証済みアカウントが有料かどうかをユーザから見えないようにし、ユーザに対してチェックマークを完全に隠すオプションを認めています。
職歴シェアは慎重にしたほうがいいかも。
自分の職歴をXとシェアしたい(マスク氏に見てもらいたい)! と思っている方もいるかもしれませんが、その前にマスク氏についてもっと知った方がいいかも。雇用差別の疑い、数々の報復事例、組合つぶし、安全性の疑いのある環境、プライベートの余裕がなくなるなるほどのハードな職場文化など、彼と彼がいた企業には波乱の歴史がありますから。
今後XがLinkedIn的な機能でどんなことを始めるのかわかりませんが、マスク氏が指揮を執っている以上、働く人々の幸福をどこまで大事にしてくれるのか、少々疑問符がつくところであります。