見られているのはイヤだなぁ。
Amazon(アマゾン)が連邦取引委員会(FTC)からAlexaと、傘下のホームセキュリティカメラRingのプライバシーに関して訴訟されていた件で、約3100万ドル(約43億1000万円)の和解金を払うことに同意しました。
内訳はAlexaが約2500万ドル(約35億円)。Ringが約580万ドル(約8億1000万円)です。
でも、この和解金の支払いは納得のいくものではないみたい。さて、何ででしょうね。
和解金は払うけど法律違反を否定
Ringの広報担当者Mai Nguyen氏は、「私たちのデバイスとサービスは、お客様のプライバシーを守り、経験をコントロールするように設計されています。AlexaとRingに関するFTCの主張には同意しません。法律違反であったということも否定します。和解は揉め事を過去のものにするためのものです」と、和解に対して不満を露わにしています。
しかし、リングはユーザーの動画が見放題状態になっていたし、Alexaは子どものやりとりを永久的に保存していたんですよ。
え、盗撮……?
FTCによると、Ringは従業員や請負業者がユーザーの動画を見れないようにする制限をかけておらず、2017年までユーザーの許可なくアルゴリズムのトレーニングに使っていたそうなんです。
驚くことに、特定の職務に関係していない人ですら、動画を視聴したり、ダウンロードしたり、シェアしたりできる状態だったのだとか。
これにはFTCの消費者保護局長であるSamuel Levine氏も「Ringはプライバシーとセキュリティーを軽視した。消費者をスパイ行為や嫌がらせの危険に晒したのだ」と強い言葉で非難。「FTCのオーダーは、プライバシーより利益を優先したって報われないと明確化することになる」とプレスリリースに書いています。
しかも、リスクに晒したなんてレベルではありません。ある訴訟では、Ringの従業員が81人の女性ユーザーの動画を見ていたと語られているんです。動画の数は数千本にも上り、寝室、スパイカメラ、風呂場などのラベリングされたカメラが見つかった、とのこと。やーだー。
The Interceptや The Informationは、ウクライナの請負業者にも同様のアクセス権が与えられており、同様の問題が発生していたと報じています。ちなみにAmazonは、過去に4人の従業員(盗撮犯?)を解雇してたと発表しているんですよね。
ただ、Ringはこの問題をずっと放置していたわけではありません。FTCが調査を始めるよりも前に、対処しているといいます。
「私たちは、顧客のプライバシーとセキュリティを保護しながら、愛される製品と機能を提供することに努めています。FTCが調査を始めるより以前から、この問題に対処しています」
Alexaに対する訴訟は、子どもがらみ
Amazonは保護者に嘘をついて、子どものデータを無期限に保存して利用していました。アルゴリズムのトレーニング用だったようですが、保護者に嘘をついてまでというのはちょっと、ね。
FTCは、AmazonがAlexaのデータ削除がどれほど簡単なのかをアピールしながら、保護者がAmazonに子どもの音声データを削除するように依頼した後も保存し続けたとして、児童オンラインプライバシー法(Children's Online Privacy Protection Act of 1998:COPPA)に違反していると主張しています。
「COPPAはどんな理由があろうとも、企業が子どものデータを永遠に保存することを認めていません」と、アルゴリズムをトレーニングするために保存したとするAmazonを非難しています。
今回提案されたオーダーには、Amazonが子どものデータを削除することと、それらをアルゴリズムのトレーニングに使用しないことが明記されています。
この件について前出のNguyen氏は、次のように語っています。
「強力なプライバシー保護と顧客管理でAlexaを構築し、Amazon KidsはCOPPAに準ずるようにデザインしました。また、AlexaにAmazon Kidsを含める前にFTCと協力しています」
そして、すでにプライバシーポリシーが強固であることをダメ押ししつつ、さらに小さな修正を加え、保護者が選択しない限り18カ月以上使っていない子どものプロフィールは削除すると伝えています。
Amazonにとって3100万ドルって安くない?
ちなみに、3100万ドルはAmazonにとっては取るに足らない金額です。Ringを5年前に買収したときは18億ドル(約2500億円)支払っていますし、2022年のアマゾンの売り上げは約5250億ドル(約73兆3000億円)です。
では、なんで少額でも訴訟を起こすのかというと、前例を作るため。
FTCは今年に入ってテック企業とプライバシーに関する和解を繰り返しているんですよね。例えば消費者のヘルスケアデータを第三者に不正に開示したGoodRX。もう1つはPremomという妊活アプリ。登録されていたユーザーの月経周期に関するデータを第三者に渡していました。
声明文の中で、Alexaとの和解は「機械学習が法律を破る言い訳にならないというメッセージを送るためのもの」だと、FTCのAlvaro Bedoya委員は述べています。
ユーザーとしては、サービス向上のため〜と言われると、データを利用されるのはある程度受け入れてしまう傾向がありますが、考えてみたらイヤですよね…。