着想源はバトミントンの羽。
運用を終えた人工衛星は通常、大気圏に再突入して燃え尽きるものです。
しかし、ウェールズの宇宙ベンチャーSpace Forgeは、衛星を再利用できるようにしようと折り畳み式の耐熱シールドを開発中。今年後半には、地球低軌道での実証実験を行なう予定です。
大気圏突入しても燃え尽きない
アーサー王の伝説の盾にちなんで名付けられたという、耐熱シールド「Pridwen(プリドゥエン)」。この技術の発表時にSpace Forge社が出したプレスリリースには、地球の大気圏を落下していく際の高温に耐えられる合金が使われていると書かれていました。
同社はイギリス宇宙局と欧州宇宙機関(ESA)からの資金提供を得て、4年以上かけてPridwenを開発。シールドは機体に熱が伝わるのを防ぐため、再突入前に展開する設計で、衛星は速度を落として安全に地球へと降下することで再利用できるように。
SpaceXはFalcon 9の1段ブースターの再利用でロケット業界に変革をもたらしましたが、Space Forgeは寿命を迎えると廃棄される人工衛星で同様のことをできればと考えているのです。
さらに同社は、地球へ帰還する機体を水上でキャッチする自律型のドローンシステムFielder(フィールダー)の開発も進めています。この技術はPridwenと併せて、軌道上の製造インフラを構築するために再利用可能な人工衛星プラットフォームへと組み込まれるそう。
Space ForgeのCTOで共同設立者のAndrew Bacon氏は、プレスリリースの中でこう述べています。
「宇宙空間で作られたスーパーマテリアルは、地上でのライバルが絶対に敵わない形で地球の産業の膨大なエネルギーを節約でき、CO2排出量を抑制するでしょう。
PridwenとFielderは、新たな産業革命を推し進められるような完全に再利用可能な製造向け人工衛星を開発する弊社の計画の鍵となる部分です」
Pridwenのプロトタイプは、プラズマ風洞やプロトタイプを高高度気球からの落下などでテストされてきましたが、今年後半には米国から打ち上げ予定の「ForgeStar-1A」衛星と共に軌道上での実証実験が計画されています。
ForgeStarとは、軌道上の製造ハブとして機能する予定のSpace Forgeによる再利用可能なプラットフォームのコンセプト。PridwenとFielderはその中で重要な役割を担います。 SpaceNewsによるとSpace Forgeは、2021年に1020万ドル(約14億2000万円)を調達しており、米国での本部のロケーションを探しているようです。
人工衛星分野における折り畳み式テクノロジーは、宇宙機が燃え尽きるのを防ぐだけでなく、地球低軌道から宇宙デブリを片付けるという目的でも普及しつつあります。
例えばドイツの企業High Performance Space Structure Systemsが昨年末に実証実験に成功したのは、Drag Augmentation Deorbiting System (ADEO) というシステム。巨大な帆が展開されることで人工衛星の抗力が増し、衛星は軌道を離脱して大気圏で燃え尽きるようになるというものでした。
Source: Space Forge, SpaceNews