学びの場でChatGPTの使用を許可するかどうかは、悩ましい問題かもしれません。
ニューヨーク市の公立校は、生徒の学習にネガティブな影響を与えると判断して禁止したものの、最近になって撤回しました。一歩引いてみると、AIチャットボットは“それほど悪くない”と気づいたんですって。
条件反射的に怖がってしまっていた
市の公立学校の責任者であるDavid Banks氏は、先週の木曜日に、ChatGPT使用禁止を解除すると発表。
禁止にした理由は、OpenAIのチャットボットを使用可にすると学生が不正を働いたり、批判的思考を持ったり、問題解決能力に影響が出たりするのではないかと考えたからでした。
しかし、「この条件反射的な拒否反応のせいで、生成AIが学生や教師をサポートする可能性や、生成AIへの理解が重要となる社会で学生がどのように生きるか、といった現実を見落としていた」らしく、「慎重になっていたことは正しかった。一方で、今はこの技術のパワーとリスクを深掘りし検討する段階にきた」とChalkbeatに書いています。
ポジティブな使用例を見た
急に意見や考えを180度変えるのって簡単ではありません。Banks氏の場合は、教育現場でポジティブな使用例を目撃したそうです。
具体的には、クイーンズの中学校で生徒たちが「AIの偏見をめぐる倫理的問題」について議論を展開したり、ChatGPTに質問やリサーチを頼んで弾き出された結果があっているのかどうかを検証したり(ほとんど間違っていたらしい)、といったものです。
また、ある中学校では教師がChatGPTを使って授業計画書を作ったり、試験用紙を採点したりしていたそうです。
こういった使用例を見たことに加えて、テック業界のリーダーに相談したことで、学校でもChatGPTを使うことを決めました。
かなり積極的にAIを導入するっぽい
ニューヨーク市の公立学校は、教育者と生徒に対して、この画期的な技術を学び探究することを推奨します。それだけでなく、学校内での発見を共有するリポジトリやコミュニティも作ります。
禁止から一転、かなり積極的な姿勢になりました。
それに教育省は、教師に対してリソースや教育現場で成功したAI実装の実例、AIツールキットも提供予定だとBanks氏は語っています。
とはいえ混乱も…
Banks氏がChatGPTを積極的に導入すると決めた一方で、AIが原因で卒業論文の採点を×にした教授も。
米テキサスA&M大学の教授は、生徒が書いた卒業論文をChatGPTに読み込ませて「これはAIが書いたものかどうか」と判断させました。すると「AIが書いた」と答えたので、半数以上の生徒が落第の危機に直面しているのです。
Banks氏がChatGPTを禁止にしたのも、生徒の不正が理由のひとつでした。この教授が疑心暗鬼になってしまったのも当然の結果なのかもしれません。
ところがChatGPTにはAIが書いたのかどうかを正確に判定する機能はありません。
ちなみに、私が他媒体で書いたコラムを読み込ませて「AIが書いたか判定して」と尋ねたところ、段落によって「人間が書きました」と「AIが書きました」という判定が出ました。
「人間が書いた」と判定した基準を教えてもらったところ、文体が流暢で文法に一貫性と癖があるから、と書かれていました。
なお、AI判定された理由を問いただしても、謝罪するばかりなので分かりませんでした。
ただ、判定力の精度は低くても、人間が書いたかどうかわからなくなるレベルの文章を作る力を向上させているので、“学び”の概念を変えていく方向になっていくのかもしれません。