Psychic VR Lab、パルコ、ロフトワークによる共同プロジェクト「NEWVIEW」が、“体験デザイン”としての総合芸術=XR(VR/AR/MR)表現を学ぶためのあたらしい表現の学校「NEWVIEW SCHOOL 2022」を開校。4年目を迎えた今年は、7月〜10月にかけてオンラインで講義を行ないました。
近年、XR技術の広がりはめざましく、5G時代の到来を期にさまざまなトライアルがなされ、次々に作品が生まれています。NEWVIEW SCHOOLでは、そんな時代のデジタル技術や思考を取り入れて新しい表現・体験をデザインする第一線の講師陣を迎え、仮想現実・拡張現実・複合現実における本質的な思考と表現を養うカリキュラムを構成。全国の受講クリエイターとともに実験と実践を繰り返しました。
3次元空間で体験をデザインするための基礎講座からはじまり、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)の作品表現を両輪で習得していきます。またXRへの捉え方や視点を学ぶための講義に加えて、講師からの課題の制作を通してインプットとアウトプットを繰り返し、次の時代のクリエイションを担う実践力を養います。
受講生の作品へフィードバックをするゼミ講師として、アーティストの谷口暁彦さんをはじめ、コグニティブデザイナーの菅俊一さん、映像監督のYPさん、プランナーの佐藤ねじさん。多彩なジャンルのクリエイターから特化した学びを得るため、現“在”美術家の宇川直宏さん、VRクラブ「GHOSTCLUB」主催する0b4k3さん、アーティストのたかくらかずきさん、ARアーティストのアサギ東京さん、脚本家・演出家の小御門優一郎さんやNEWVIEW SCHOOL卒業生など、クリエイティブの現場の第一線で活躍するクリエイターがゲスト講師を務めました。
多彩な講師陣から、XR表現のための本質的な考え方=「VR/ARであることが目的なのではなく、XRである理由を考えながら作る」という思想を学び、次の時代のクリエイションを担う力を養うことを目的にしているこのスクール。
実際にどんな講義があったのか、ご紹介しましょう。
3次元空間表現の概念について

宇川さんは、メタバースをはじめ3次元空間表現の概念にまつわる講義「3次元空間表現とは」を行ないました。
講義の前半では、メタバースのほぼすべての概念が含まれている1990年代の『スノウ・クラッシュ』や、サイバースペースの概念が描かれた1980年代の『ニューロマンサー』といったサイバーパンク小説をはじめ、メタバースの概念を知る上で重要な古典を紹介。過去に生まれたビートニクスやそれに連なるヒッピーイズム、サイケデリックカルチャー、レイヴカルチャーといった夢想現実的なカウンターカルチャーとインターネットやメタバースの関係性などが語られ、その上でメタバースの概念についてまとめました。
現実を超越したところにある無限の幻想を共有しようとする意思が集積する時空こそが、“ユニバース”に対しての“メタバース”と捉えることができる。

後半は、コロナ禍で生まれた新しい3次元空間表現の例として、『フォートナイト』でのトラヴィス・スコットによるバーチャルライブや、映画『竜とそばかすの姫』の世界観などを紹介。現在のアートやエンタメの表現について、「今は“身体性を論じながらも、ゲーム的リテラシーを身につけないといけない”という時代に差し掛かっていて、アートもエンタメも様相が変わり、仮想と夢想の融合が生まれてくる」と語りました。
最後に最新事例として紹介されたのは、ファッションブランドのショー。リアルとバーチャルを織り交ぜた「ANREALAGE」や、モデルが全員バーチャルヒューマンのマスクをつけて登場することで“没個性”を表現し、ショーの最後で実際の姿を晒すことでそれぞれの個性を取り戻すという構成の「doublet」。また、NFTでファッションアイテムを買い、自分の写真を合成してARのルックを作ることができるデジタルファッションブランド「DRESSX」にも言及。
ポストコロナ時代における3次元空間表現について、宇川さんはこう語りました。
パンデミックにより、“会う”という行為自体が崇高な体験に変わっていった。“会う”ことがアップデートされたポストパンデミック時代に、どういう形で「現実を、クロスリアリティの視点から考える」ことができるのか。それが今後の3次元空間表現におけるテーマになる。
これからは物理世界の中にメタなレイヤーを重ねて、五感を溶かしながら全く新しい感動を生み出す“メルティング・リアリティ”という表現が求められるだろう。
企画についての実践的な講義

佐藤ねじさんは、講義「作品の企画づくり」で講師を務めました。まず、アイデアは「素材」であり、企画は「目的があるもの」「アイデアを社会実装するもの」「仕事・作品制作」として、アイデアと企画の違いについて語られました。
また企画づくりにおいて重要なのは、目的と手段を明確にし、それを磨くことだといいます。
良い企画ができるかは、ルール次第。その目的・手段を明確にすることが大事になる。そういう風に考えていくと企画の立て方も変わってくる。ゴールをどこに据えるかで、作るべきものやアウトプットの質・量は大きく変わる。
ほかにも、「目的・ゴールを設定する時は、"新しい×話題化×ヒット(売れる)"という3要素を満たすものを考える」「企画をヒットさせるためにはマーケティングの勉強も必要」といったことが語られました。
「表現が話題になる」のと「ヒットして売れる」のは、違うロジックが必要になるだけでなく、そういうロジックを入れた方がよりおもしろくなる。目的を決めると、単純に“おもしろいものを作りたい”と動いていたときの自分とは違うアクションができ、回りまわってコンテンツそのものに結果として返ってくる。目的・手段を決めることは本当に重要。
作品づくりにおけるコンポジションの重要さ

谷口暁彦さんが講師を務めた講義「VR/ARの世界表現」では、作品のコンセプトを、物や形、色などのコンポジションによってどのように伝えるかについて語られました。
日本語では「構図」「組み合わせ」あるいは「置き方」と訳されるコンポジションですが、谷口さんは「作品を作る=事物をどのように配置するかというコンポジションを作ること」と、作品づくりにおけるコンポジションの重要さを説明します。
コンポジションを作ることで、そこからどのような意味や質感が立ち上がるか。何の説明もなくいきなり作品を見せられたときに、それをどう読み解くことができるか。そのための基礎的な技術。
さらに「作品の中に言葉があり、それが相互にどう響き合うのか考えていく。作品を名づけたり説明したりするものではなく、作品のタイトルもコンポジションの一部として考えることが大切だ」と語り、これらのことがVR/ARといったニューメディアの中で、どのように可能かをよく考えることが重要だといいます。
デジタルのマテリアリズムみたいなこと。
コンピューターのような新しいメディアの中には、一見物質性がないように思えるが、実空間とは異なる物質性がある。VR/ARの世界表現では、そうしたマテリアリズムをどういう風に使って表現していくかを考える必要がある。
なお、受講生たちは、11月に卒業作品を提出後NEWVIEW SCHOOLを卒業し、12月にはSCHOOLでの活動に関する展示が行なわれる予定。卒業作品展では、その可能性を感じられるあたらしいクリエイティブがズラリと展示されるはず。
NEWVIEW SCHOOLで学んだことを武器に、受講生たちは今後の社会にどのようなインパクトを与えてくれるのでしょうか? NEWVIEW SCHOOLは、これまでにXR分野の第一線で活躍する卒業生を多数輩出しているだけに、受講生の卒業後の活躍にも期待が高まります。
渋谷を実験フィールドにフィジカルとバーチャルが溶け合うXRエンターテインメント「NEWVIEW FEST 2022」開催!
会期:2022年12月23日(金) 〜 25日(日)
会場:渋谷PARCO(東京都渋谷区宇田川町15-1)および渋谷スクランブル交差点
時間:渋谷PARCO会場は、渋谷PARCOの営業時間に準ずる
1. NEWVIEW ULTRA XR LIVE
歌唱特化型AI、#kzn(キズナ)が渋谷に巨大出現! XRライブを展開
日時:12/23(金)、12/24(土)、12/25(日)各日24時間視聴可能
参加費:無料
2. NEWVIEW MARKET
実店舗でのフィジカルとデジタル双方の作品販売を行うXR実験店舗 / ギャラリー
3. NEWVIEW AWARDS 2022 FINALIST EXHIBITION
XRコンテンツ・アワード「NEWVIEW AWARDS2022」で選出されたファイナリストの作品を体験できるエキシビジョン
4. NEWVIEW SCHOOL POP UP OPEN CAMPUS
「総合芸術としてのXR」を学ぶ、あたらしい表現の学校、NEWVIEW SCHOOL。多彩な講師が講義で出した名物課題と受講生の作品を公開!
5. EVENTS
NEWVIEW AWARDS 2022 授賞式、XR演出のDJイベントやトークをお楽しみいただける、NEWVIEW FEST 2022のオープニングパーティの模様を配信
Source: NEWVIEW