これ、一体じゃなきゃだめ…?
斬新な外観で一瞬エイプリルフール!? と思ってしまったDyson(ダイソン)の空気清浄機付きヘッドホン、Zone。日本での発売に関しては未発表ですが、米GizmodoのMichelle Ehrhardt記者がハンズオン(ヘッドオン?)してますので、どんな感じか見てみてください!
先日、ダイソン初のオーディオ製品「Zone」の価格発表には度肝を抜かれました。ヘッドホンと空気清浄機の融合ってだけでもある意味プライバシー的にリスクなんですが(電車でも飛行機でも他人から一挙手一投足見守られること必至)、そのお値段がまた、最低でも949ドル(約12万6000円)もするんです。
「最低でも」ってのは、Zoneには「プレミアム」バージョンがあって、色がネイビーとブロンズの独自色、レザーのキャリングケースに予備のフィルターも付いてきて、お値段999ドル(約13万2000円)になるんです。ここまでくると50ドルの違いはそんなに大きくないかもしれませんが、1,000ドルのヘッドホンって周りの人に言ったらどんな反応でしょうね。ちなみにN95マスクアタッチメントがあるんですが別売りで、1,000ドルの中には入ってません。
その涙目のお値段で、8〜10基のマイク(空気清浄オンかオフかで変動)を使ったアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能と、50時間のバッテリーライフが手に入ります。ただし空気清浄機能をオンにすると、バッテリーライフは1.5〜2.5時間(空気清浄スピードにより変動)に激減します。でもZoneの一番プライスレスな価値は、空気清浄バイザーを着けることでできるバットマンの敵・ベインになれることでしょう。イヤーカップの中のフィルターと連携して、新鮮な空気を鼻と口へ、10,000RPMで送り込みます。

装着してみると
ダイソンがZoneの開発を始めたのは6年前、COVID-19よりずっと以前にさかのぼります。でもこのヘッドセットはまだ、自身の中でも、時代とも、葛藤を抱えているように見えます。
空気清浄バイザーのない状態だと、ヘッドホンにはしっかりした重さがありつつ頭が痛くなるほどじゃなく、それでも重量1.3ポンド(約590g)とAirPods Maxより205gほど重くなっています。それに対し空気清浄バイザーは奇妙なほどペラペラなんですが、重量は1.48ポンド(約67g)あります。でもこのバイザー部分は顔の動きに合わせて動く必要があるので、あえてペラペラにしてるんですよね。とはいえ、アルミのヘッドホンからプラスチックとナイロンのバイザーへの切り替えは痛々しいほどくっきりしてます。この不釣り合いな組み合わせのせいで、通りすがりの多くの人が抱くのと同じ疑問が頭をもたげます。なんでヘッドホンと空気清浄機をくっつけたの? と。
ダイソンいわく、騒音もある種の環境汚染だ、という考え方だそうです。ってことは、空気清浄機のアイデアのほうがヘッドホンより先だったということでしょうか? 真の理由は、ヘッドホンの形状が空気清浄機の土台として適していたとか、イヤーカップがあることで空気清浄機のモーターを隠せるとか、ANCがモーターの音をキャンセルできるとか、そういうことかもしれません。
でもよい音を求める人が空気清浄機を欲しがるか、またはその逆はあるか、というと、必ずしもそうでもありません。意外な2つのものをくっつければ、中身はそのままで価格を上げられるという発想なんでしょうか? しっかりしたヘッドホンとプラスチックな空気清浄バイザーのビルドクオリティの違い、材料コストの違いを考えると、そんな大人の事情なのかな…とつい勘ぐってしまいます。
よいところもたくさんある

ポジティブなことを言うと、Zoneの各パーツはそれぞれ、しっかり機能しています。空気清浄バイザー自体は特に力が入っています。外気の質を表示するアプリと連携してて、私がデモをしたオフィスの空気はそもそもいろいろフィルターされて「良好」とされてたんですが、バイザーを通した空気はさらに軽く感じ、においもよく、バイザーの中からファンで押し出される空気がうっとうしいとか冷たいとかいう感じも全然しませんでした。ちなみにこのバイザーを装着してても顔は外に出てるので、N95アタッチメントを着けない限り、コロナ対策としては期待できません。
バイザーを着ける角度とか顔からの離れ具合は調整可能です。またN95アタッチメントを外さないでバイザー部分だけをサッと下に外すのも簡単です。バイザー部分を外すと、誰かと会話したいんだと認識されて、ヘッドホンが自動で外音取り込みモードになります。空気清浄のスピード設定は3つ、いい具合の差が付いていて、いろんな使い方に対応できます。自動モードにすると、内蔵の加速度計が装着した人の動きに合わせて清浄スピードを調節してくれて、便利さという意味でもバッテリーライフという意味でも助かります。こういうパーソナルな空気清浄機が体によいのかどうかはよくわかりませんが、使ってみた感じでは、たとえば長時間フライトとか、ゴミだらけのニューヨークの街中とかを過ごしやすくする意味はあるかと思いました。

ヘッドホンとしての着け心地は良好。ダイソンはドライバーとかオーディオコーデックのスペックは教えてくれませんでしたが、Spotifyを聞いてみたところ、私が家で使ってるゼンハイザーのヘッドホンよりよい音(私のは180ドル≒2万4000円ですが有線でANCなし、空気清浄機能なし)に感じました。Zoneのノイキャンは主観的には、Apple(アップル)とかソニーのものほどパワフルじゃありませんが、ダイソン初のオーディオ製品としてはなかなかです。
空気清浄機能を使うなら、そのノイズを抑えるためにもノイキャンが役立ちます。2つのマイクは、空気清浄バイザーの音を拾うためだけにあって、完ぺきに機能しています。周りに漏れる空気清浄の音も、ブロックできたらもっとよかったんですけどね。周りからの聞こえ具合はテストできなかったんですが、装着した本人的には、ノイキャンをオンにしなければ空気清浄の音は間違いなく聞こえます。
Zoneのオーディオ操作はジョイスティックで行ない、一時停止・再生・スキップとかデジタルアシスタントとかに簡単にアクセスできます。ただノイキャンの操作はだいぶストレスを感じます。ヘッドホンの左右どちらかのイヤーカップをダブルタップすることで内部の加速度計に伝わって、ANCと外音取り込みを切り替えられるはずなんです。が、これに成功する確率は5回に1回くらいでした。これはチューニングで直せる問題だと思いますが、とにかく今のところ、ノイキャンもアプリで操作しなきゃいけなくて、混んだ電車の中ではやりたくありません。
でも少なくともヘッドセットの重さはうまく配分されていて、ヘッドバンドにはノッチが入ってるので、調節は簡単かつ正確にできます。

じゃあ問題点は
ヘッドホンとしても空気清浄機としてもだいたいきちんとできてるんだけど、両方同時に使うとうまくいかない、ってことが残念すぎます。値段も値段ですしね。
そもそも空気清浄バイザーをZoneに取り付けるときにイライラします。左右のイヤーカップのスロットの正しい位置にぴったり合わせて付けなきゃいけないし、左右が離れた状態じゃないと簡単に入っていきません。だからヘッドホンを付けた状態で後からバイザーを付けるのがベストということになるんですが、そうなるとスロットが直接見えないので手探りになります。ヘッドホンを外した状態でバイザーを付けることもできますが、そうするとイヤーカップ同士がくっつきたがるのでうまくいきません。手が3本必要になります。
さらにバイザーはヘッドホンのスロットにカチッとはまるので、髪が長いとそこに入り込みがちです。実際、試してる間に何本か髪が抜けました。バイザーを外したとき、毛束も一緒に取れていきました。

一緒に着けにくいのは、ヘッドホンとバイザーだけじゃありません。Zoneが最初に発案されてから製品化されるまでの間に、世の中はマスク生活へと変わっていきました。今は去年ほどマスク度高くなくなってますが、それでもマスク着用が推奨される場所はあり、パーソナル空気清浄機を買うような人はそういうことを気にしそうです。Zoneはマスクを着けた状態でも使えますが、着けやすくはないし、機能的にも問題があります。
ZoneのN95アドオンは今のところ2パーツに分かれてます。ひとつは空気清浄バイザーのスロットの下に付けるパーツなので、バイザー部分を若干バラさないといけません。いろんなプラスチックを開けないといけなくて、少なくとも現状では、アドオンにはきれいに着けるためのガイドみたいなものが一切ありません。私はデモでダイソンの人が手伝ってくれても、マスクのアドオンを着けるには20分くらいかかったし、アドオンありだと空気の流れも悪くなります。それは当然かもしれませんが、空気清浄機能の邪魔するんだったら、ここまでしてマスク着けなくていいなって思わされました。現状だと、マスクをするか、バイザーをするかどっちかがベストです。
Zoneは世に出せる状態なの?

私が感じた問題点のほとんどは、ローンチまでに修正可能な初期の問題のように思えました。とはいえ、空気清浄機が付いてることを理由に10万円超えるヘッドホンがこの完成度なのはどうかと思います。いろんな意味で、出来のよい2つのデバイスをテープで無理やり貼り付けたみたいに見えます。将来的にヘッドホンと空気清浄バイザーをそれぞれ別々で売り出したとしても驚きません。
でも、この合体ほやほやの状態をあえて楽しみたい人は、(訳注:米国では)2023年3月にダイソンストアのアポを取ればプレオーダーできます。または4月1日からは、オンラインでも買えるようになります。フルにレビューしたらどうなるか、ワクワクしながら待ちましょう!