ほんの少し長い1日、ってのはもうなくなる。
1日は24時間、ってことになってますけど、地球が1回転するのって実は24時間ぴったりじゃないみたいです。そんな地球の自転と機械的な24時間の微妙な誤差を埋めるのが「うるう秒」だったんですが、この度それが廃止されることになりました。といっても、実際に廃止になるのは2035年までと、まあまあ先の話です。
ほぼ満場一致での廃止
うるう秒は1972年によかれと思って導入されたんですが、それから50年経つ今、メリットよりデメリットのほうが多いと考えられるようになってきてました。特にテクノロジー業界では、うるう秒の調整が入るたびにどこかしらで障害が発生、悩みの種となっています。
そこで今回国際度量衡局(BIPM)が投票を行なった結果、ほぼ満場一致でうるう秒の廃止が決まりました。BIPMは今後、地球の動きと時計の誤差を調整する新たな方法を探すことになります。
地球の自転は、潮の満ち引きとか大気の状態とか、宇宙のなかのいろんな現象の影響を受けています。なので、たいてい地球の1年とか1日は原子時計のそれよりも若干長くなっているし、その差分も日々変化しています。そこで公式の時計に余分の秒(うるう秒)を入れることで、地球と時計の差が広がりすぎないように調整してるわけです。1972年に調整が始まって以来、最初の10年ほどは毎年うるう秒がありましたが、その後はあったりなかったりして、50年の間に合計27回入ってました。一番最近うるう秒があったのは、2016年でした。
テック界からはずっと不人気
テック企業はほぼ毎回、うるう秒に悩まされてきました。うるう秒に組織的に対応するようなシステム基盤が存在しないので、いろんなソフトウェアのコードに混乱をきたすことも多々ありました。コードは通常、時間が進むペースは一定だという前提で書かれているのに、突然ポンと秒が入ってきちゃうからです。
うるう秒は、人間にとってはほとんど意識しないような短い時間ですが、コンピューターにとっては大きな混乱につながることもあります。2012年にはRedditが、うるう秒のせいで40分にわたる障害を起こしました。米Gizmodoの兄弟サイトいくつかも同じタイミングでダウンしています。2017年にはCloudflareで似たような問題が起きました。今年Metaは公式ブログの中で、うるう秒廃止を強く訴えていました。
「負のうるう秒」の混乱も回避
「うるう秒の導入は不連続を生み出し、それにより全球測位衛星システム(GNSS)や通信、エネルギー伝送システムといった重要なデジタルインフラに深刻な不具合を引き起こすリスクとなっている」。国際度量衡局は決議の中でいっています。国際度量衡局は他にも判断理由として、デジタルネットワーク横断での組織立った調整機能が存在しないことや、うるう秒による全体的な混乱、そして地球の自転速度の高速化などを挙げています。
最近では地球の自転高速化に合わせて「負のうるう秒」を導入するというアイデアも浮上してはいました。でも、負のうるう秒は従来のうるう秒よりもっと面倒なことになるかもしれず、それが引き起こす結果は「予測もテストもされたことがない」と国際度量衡局はいいます。そこで彼らは、2035年までに別の解決策を編みだすこと、今後100年間は協定世界時をうるう秒なしで運用することを決めました。100年も経ったら、誰が何をどう考えて決めるのか、わかったもんじゃありません。まさに時間だけが、うるう秒の行く末を教えてくれることでしょう。