ちょっと厄介なことが起きているようです。
カエルにキスするなんておとぎ話の世界じゃあるまいし…と思うかもしれません。でも世の中には、実際にカエルをつかまえて口のなかに入れようとする人もいるみたいです。
「パーク内の生き物は舐めないで」
National Park Service(アメリカ合衆国国立公園局)は、先日Facebookに「バナナナメクジであろうと、見慣れないキノコであろうと、夜の闇のなかで目を光らせる大きなカエルであろうと、パーク内の生き物を舐めたりするのはやめましょう」と投稿。そこには上の画像が添付されていました。
暗闇に光る大きな目…。その正体は、アメリカ最大級のカエルの一種であるソノラ砂漠に生息するコロラドリバーヒキガエル。現在は米アリゾナ州南部からニューメキシコ州の最南西端、南は国境を越えてメキシコ北西部まで生息しているとされています。旅行で現地に行く予定がない限り遭遇する可能性は低いですが、一応覚えておきたいのは、耳下腺から強力な毒素を分泌するとのこと。口のなかにでも入れようとすれば、具合が悪くなるとNPSは説明しています。
カエルを口に入れる人なんている?
そもそもカエルを見かけたところで、つかまえて舐めようとする人なんてなかなかいないのでは...と思うかもしれません。なぜそんなことをしようとする人がいるのかというと、実はこの"毒"に関係があるようです。
なんでもほかのヒキガエルや植物など自然界にある違法な化学物質と密接な関係がある「5-MeO-DMT」という成分に、幻覚を引き起こす作用が含まれるのだとか。これは「神の分子」と呼ばれることもあり、近年ちょっとした人気のある薬物になっているといいます。ただし生物学的には完全に毒です。
現在、安全性や活用法を評価するための研究が行なわれていますが、そんななかでマイク・タイソン、チェルシー・ハンドラー、ハンター・バイデンなどの有名人が「やったことある」と発言しているのが厄介なところ。ジョー・ローガンのPodcastなどで議論されたことで話題になったとされています。
密猟の結果、絶滅の恐れも
さらに厄介なのが、その結果として密猟が始まったこと。魚類野生生物局は、"薬物使用目的のコレクター"によりニューメキシコ州では絶滅の恐れがあると発表しています。「豊富に生息しているようでいても、大量に捕獲すれば砂でできた城のように一気にその数は崩れ落ちる」とNew York Timesでも専門家が警告しています。

Image: Ltshears / Wikimedia Commons
このソノラ砂漠のヒキガエルは一生の大半を地中で過ごしますが、5月から9月にかけては夏のモンスーンの季節に合わせて夜間活動するといいます。鳴き声はこちら。
致命的なリスクに注意
この分泌物を乾燥させて喫煙するという習慣が、数千年前にさかのぼる古代先住民にあったと主張する人もいるようです。その一方で、歴史調査によれば(ほかの昔からある幻覚剤とは異なり)、使用されるようになったのはほんの数十年前のことではないかとも考えられています。
コロラドリバーヒキガエルには、「5-MeO-DMT」以上に毒性のある化学物質が含まれていて、なかには致命的なものもあるといわれています。数としては稀ではあるものの、実際に遊び目的で使用後に死亡したケースも確認されています。こればかりはもう「見かけてもほんとに舐めたりしないで」としかいいようがなさそうです…。