今年8月、AMDのCEO・Lisa Su氏は最新CPUテクノロジー・Ryzen 7000シリーズの発表の場で、ワンモアシングをチラ見せてくれました。次世代GPUアーキテクチャ・RDNA 3の発表、の発表があったんです。そして11月3日、AMDからのNvidiaのGeForce RTX 40シリーズに対する答えでもある、RDNA 3の全貌が明らかになりました。
モジュール化でさらなる効率を
Su氏のプレゼンは、Ryzen 7000シリーズの振り返りと、彼らの野心的な目標の再確認から始まりました。Su氏はRDNA 3に関して、エネルギー効率とパフォーマンスにかける意気込みを繰り返しました。
「我々の目指すところは、電力効率がすべてです。ワットあたりパフォーマンス向上に向けた革新を着実に続け、すべてのゲーマーに素晴らしいパフォーマンスを、適切な電力消費でもたらしたいのです」とSu氏は語ります。
RDNA 3は、GPU全体の効率を最適化するために、チップレットを始めとしたモジュール式のアプローチを採っています。CPUのRyzenファミリーと同じく、RDNA 3はチップレットを混載する手法です。5nmグラフィックスダイ(GCD)の演算ユニットにはシェーダー、ディスプレイエンジン、新たなメディアエンジンが含まれ、6nmのメモリキャッシュダイ(MCD)にはGDDR6コントローラーと、96MBのAMD Infinity Cache(第2世代)が搭載されてます。
この新たなデザインにより、RDNA 3チップレットは内部伝送速度が最大毎秒5.3TB(RDNA 2の2.7倍)に、演算速度は最大61テラFLOPSに達します。これらはすべて、最大384bitのメモリバスを備えた24GBのGDDR6(RTX 4090のGDDR6Xじゃありません)にサポートされてます。さらにSu氏によれば、これによってワットあたり性能も54%向上しています。
RDNA 2からあらゆる面が向上
このRDNA 3アーキテクチャ採用のGPUは、製品としてはふたつ、Radeon RX 7900 XTXと、RX 7900 XTの展開です。
Radeon RX 7900 XTXはGDDR6が24GB、Radeon RX 7900 XTはGDDR6が20GBです。どちらも4K・8KゲーミングGPUとして作られ、先代からはあらゆる面でアップデートされてます。RDNA 3はRDNA 2に比べ、AI系の処理性能が2.7倍、レイトレーシングは1.8倍とされてます。レイトレーシングを含むレンダリングにおいては、計算ユニットあたりの性能が1.5倍、クロックあたりの命令実行数が2倍とされてます。

さらに、このデータをディスプレイ上で動かすのがAMDのRadiance Displayエンジンです。このエンジンはチャンネルあたり12bitの色を、最大680億色で、より高いリフレッシュレートで動かせます。DisplayPort 2.1とHDMI 2.1への対応も手伝って、RX 7900 XTXとRX 7900 XTは1440pで最大900Hz、4Kで最大480Hz、5Kで最大165Hzを実現してます。
Radiance Displayとともに、AVC・HEVCフォーマットの同時エンコード・デコードができる新たなデュアルメディアエンジンも発表になりました。このエンジンもAV1エンコードとデコードをサポートし、最大解像度は8K60です。AMDはこの発表の中で、将来的には、OBSその他のメジャーな動画ストリーミング・編集ソフトウェアでAV1エンコードにも対応することもチラリと予告しました。
また関連してSmartAccess Videoなる次世代機能の存在も明かされ、これをRyzen CPU+Radeon GPUと一緒に使うことで、4Kマルチストリームエンコーディングで最大30%のパフォーマンス向上が期待できるそうです。
ゲームのFPSが未体験ゾーンに
ゲーミング性能に関しては、RX 7900 XTはAMDの先代フラッグシップGPU、Radeon 6950 XTに比べて、ラスタライゼーションで1.7倍、レイトレゲームで1.6倍の性能とされます。FidelityFX Super Resolution(FSR)を使う環境で、7900 XTXに関して示されたグラフでは、いくつかのタイトルが4Kで200FPSをはるかに超えてました。
ひとつすごかったのは『Valorant』で、RX 7900 XTXの場合704FPSで動いてました(!)。驚愕の数字がいろいろ出てますが、実際その通りかどうかはレビューでお知らせしたいと思います。
スペックに関しては、RX 7900 XTXには演算ユニットが96個、ゲームクロックは2.3GHzです。全体での消費電力は355Wとされていて、これはNvidiaのRTX 4090 Founder's Editionより95W少なく、RX 6950 XTに近いです。RX 7900 XTは演算ユニットが84個でゲームクロックは2GHz、消費電力は300Wです。
ちなみにRX 7900 XTX、RX 7900 XTともに、給電に特殊なケーブルは不要です。
ソフトウェア面もアップデート
ここまではほぼハードウェアだけでの話でしたが、発表ではFSRの採用とか、FSR2でのパフォーマンス向上、そしてそれを使うときのRDNA 3の動作の素晴らしさにも触れてました。
見せてくれた例はUbisoftの『Assassin's Creed: Valhalla』で、8Kが96FPSで動いてて、短いクリップでも凄さが実感できました。またFSR2の次世代にあたるFSR3は2023年リリースで、FSR 2に比べてフレーム数がさらに倍になるとのこと。
ソフトウェアに関しては、AMDのFrank Azor氏が、Radeon Adrenalineのアップデートについて語ってました。2023年前半にリリースの新機能としては、AMDのシステムをボタンひとつで最適化できるAMD HYPR-RXがあり、これによって細かい調整をユーザー自身でしなくてよくなるそうです。

CPU・GPUを統合したベストな体験を提供すべく、AMD Advantageラインをデスクトップにも拡大することも発表されました。AMDのCPUとGPUをAMDがキュレートしたシステム構成で使うことで、ベストな環境が楽しめるっていうやつです。
1000ドル切りで12月13日発売
Radeon RX 7900 XTXとRX 7900 XTは2022年12月13日発売です。価格はそれぞれ999ドル(約14万5000円)、899ドル(約13万円)となってます。Nvidiaのフラッグシップが1,599ドル(約23万円)であることを考えるとかなりの太っ腹ですね!