視覚と聴覚でのリラックスで痛みに気付かない。
身体を切開するような手術では麻酔が必須。でも、医師としては患者の安全のために、全身麻酔より局所麻酔で手術を進めたいのが本音なのだそうです。
ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス医療センターにて、手の手術が必要な患者にVRゴーグルをかけさせ、術中に音と映像に集中してもらう実験を行いました。
現代人は高齢化と共にデスク仕事でタイピングをする時間が増えたため、手を壊しやすい傾向にあるのだとか(明日は我が身ですね)。
#VR in the OR: research by Brian O'Gara, MD, an anesthesiologist at BIDMC, reveals that patients using #virtualreality while undergoing hand surgery led to lower sedative doses & shorter hospital stays after surgery. Read more ⏬ https://t.co/KzloruTC7x
— BIDMC (@BIDMChealth) September 28, 2022
VRで意識が逸れる
手術中に好きな音楽が聴けるのはよく知られていますが、VRは現代的ですよね。コンテンツ内容はリラクゼーション系で、ノイキャン付きイヤホンと併せて全方位が見渡せる山や草原や森林など、落ち着いた空間を没入体験してもらいます。実験は患者に局所麻酔を行い、いつでも局所麻酔の追加や全身麻酔「プロポフォール」を頼むことができる環境を整えました。その結果、17人中4人が全身麻酔を希望したものの、残りは局所麻酔のみで手術を終え、さらに彼らは術後の退室が平均で22分早まったのだそうです。
手術中は患者が緊張するものですが、被験者たちはリラックスできたと報告したというので、VRがかなり効果的なのがわかりました。今回の鍵は、手術とは別のことに視覚と聴覚を集中させ、気持ちを落ち着かせたことにあるようです。
身体の弱い人に「プロポフォール」を投与すると、低血圧や脳卒中、それに心臓発作や呼吸不全といった合併症が起こる危険性があるので、使わないに越したことはありません。それに局所麻酔だけなら患者も医者も待ち時間が減り、浮いた時間は別の作業や手術に回せるなど、利点がたくさんあります。
恐怖症に効果が見られたVRだが
VRは高所やクモなど恐怖症の克服に効果があったり、心の不安を乗り越えるためにホラーゲームを使うなど、メンタル面での治療に使われることがありましたよね。ですがリラックス効果で肉体の痛みも回避できるだなんて、万能感があります。デジタルで生み出すヴァーチャル・プラシーボ効果とでも言うんですかね?
この研究はもっと進めてもらいたいです。
Source: Twitter via Beth Israel Deaconess Medical Center via NEW ATLAS