どう見てもブラックバード。そう感じた皆さまは大正解。
現在上映中の『トップガン マーヴェリック』の冒頭で登場する謎の極超音速機「The Darkstar(ダークスター)」。その製作を手掛けたのは、米空軍が実際に採用していた超音速偵察機「SR-71(愛称:ブラックバード)」の開発元であるロッキード・マーティン社の極秘開発部隊、スカンクワークスでした。どうりで似ているわけだ!

同社のトップガン特設ページはこちら。8日にはツイートと併せて動画も公開されましたよ。屋根が吹っ飛ぶソニックブーム。
We partnered with @TopGunMovie to help push the boundaries of hypersonic and human performance in aviation.
— Lockheed Martin (@LockheedMartin) June 8, 2022
Get an inside look at the creation of #TopGun: Maverick’s Darkstar aircraft.
チラ見せのホーネットはなんだったのか…
2018年5月に出たチラ見せ画像では、トム・クルーズの背後にF/A-18E/F スーパーホーネットが映っていて、「これが初代F-14トムキャットの後継なの…か? ずいぶんと旧式な…」と一時騒然となりましたが、あのホーネットについてはその後、同年11月にEntertainment Weeklyがこう報じています。
いくらトム・クルーズでも軍用機には乗れない。ただクルーズ自身、パイロット免許は持っているので、映画の撮影に向けて特訓を積んできている。ほかの機体に自分で乗るようだ。
こうしてホーネットの線は消え、航空マニアの間では「別の機体って何よ?」が話題の中心になって、わずかなヒントをもとに予想合戦が繰り広げられました。
最初に予想したのは航空ブログ
最初にSR-71っぽいと言い出したのはThe Aviationist。ヒントになったのは撮影現場の隠し撮りフォトに映っていたスーツです。首のところに輪っかがあって、これは紛れもなくSR-71やU-2などの高高度偵察機パイロットが着用するフライトスーツの派生物。もしかしてロッキードが開発中のSR-71チルドレン、SR-72なんじゃないの!?と、これまた騒然となりました。
SR-71ブラックバードは史上最速の航空機で、ミサイルをもかわす未踏の超スピードで知られます。U-2偵察機が旧ソ空域で地対空ミサイルに撃墜されパイロットが連れ去られた反省から、「9万フィート上空を高速で飛び、なおかつレーダーに感知されないステルス性を備えた超音速機」というCIAの特命を受けて、天才設計士Clarence "Kelly" Johnson率いるスカンクワークスが生み出した名機。映画のプロットに出てくる「偵察機」「超音速」「ミサイルより速い」というキーワードも大きなヒントになったみたい。
映画公開が間近になると、ロッキード・マーティン社の欧州中東アフリカ地域担当広報部長が、「トップガンではSR-71の後継、SR-72のスニークピークが見られるという噂だ。この画像を見る限り、噂は本当かもしれない。楽しみ」とツイートし、同社のCEOもLinkedInで製作協力したことを明らかにしました。予想的中というわけです。
Rumours that ‘Top Gun: Maverick’, in cinemas May 27, features a sneaky peek at what might be the @LockheedMartin SR-72, successor to super-impressive SR-71 Blackbird. This still photo from promotional materials seems to support that thinking. I can’t wait #avgeek#wingfridaypic.twitter.com/PyAak69qOj
— John Neilson (@flyingjok) April 29, 2022
細かい違いはある
もっとも本物のSR-71はふたり乗りで、トップスピードがマッハ3.2です。SR-72はマッハ6超で、世界中どこでも1時間以内に飛んでいけるものを目指していますが、無人機で窓がありません。
これに対し、劇中のダークスターはマッハ10(笑)。しかも窓ありで、トム・クルーズのご尊顔がしっかり見えます。マッハ3超えで熱の壁があるし、マッハ5を超えると普通のメタルでは溶けてしまうわけですけどね。いかに超人的な飛翔体であるかがわかります。
モデル機があまりにもよくできていて中国の衛星が反応
そういう細かな違いはありますが、劇中のディテールはすべて現実を忠実に再現しています。「機体の動き、デザイン、あらゆるスイッチ、スティックのひとつひとつに至るまで実物の試験機から拝借した」とジョー・コジンスキー監督。
映画の制作にあたっては、スカンクワークスに実寸大のモデル機を作ってもらって、これをロサンゼルスの北250kmのモハベ砂漠にあるチャイナレイク海軍航空兵器基地に運んで、格納庫や滑走路で撮影を行いました。見たこともない威容に驚いたのか、中国の衛星が進路を変えてわざわざ見にきているところも米海軍によって確認されています。
本物のSR-72が外に出ることは絶対ないはずなのに、これは何だ?…と頭が「はてな?」で埋まったんじゃ…。夜間は仮設格納庫に覆われて上空からは見えなくなったそうな。
Sources: Sandboxx, Dealline, The Aviationist