バブルの盾で太陽光をそらして温暖化をストップ。MITの科学者たちが宇宙ハイテクを提案

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  • author Angely Mercado - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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バブルの盾で太陽光をそらして温暖化をストップ。MITの科学者たちが宇宙ハイテクを提案
Image: MIT Senseable City

バブル経済がはじけるのをリアルタイムで経験したので、イヤな予感しかしないのですが…。

巨大なバブルの盾で太陽光をそらせ

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、気候変動緩和策として飛び道具ならぬ浮き道具を考え出してきました。温暖化が最悪の事態になる前に、地球と太陽の間にバブルの盾を設置して、地球に届く太陽光を減らす方法について解説しています。

研究チームの公式サイトは、気候変動を止めるための「最後の手段」とされる気候工学について、これまでは地球内で行う技術がほとんどで、予期せぬ事態が起こった場合に生態系へのリスクが大きくなると指摘。もしも太陽放射が地球に届く前に1.8%だけそらすことができれば、温暖化を止めて気温を下げられるとしています。

太陽光を偏向させるのに適した薄いシリコンなどの素材からなる膨張性のバブルを並べて作った盾を、宇宙空間の太陽と地球の重力が釣り合うラグランジュ点と呼ばれる場所に設置する計画がうまくいけば、バブルの盾はブラジルくらいの大きさになるそうです。なんと日本の20倍以上!

この途方もなく大きな提案で懸念されるのは、でっかいバブルを作って、宇宙に運んで、広げて盾にする行程の物流面だと研究チームも認めています。宇宙空間まで素材を運んでから球体を作ればコストが抑えられるそうですが、いったいおいくら兆円くらいかかるのでしょうか。

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Image: MIT Senseable City

使用後の宇宙ごみが気になるところですが、チームの声明によれば、いつでもバブルの表面を破って壊せるため、宇宙ごみの大幅な削減にもつながるとのこと。これまで提案されている気候工学と違って、可逆的なのはいいですね。

バブルの盾が長期間にわたって大きさを保ち、機能をフルに発揮できるかどうかは、バブルの効率的な補充がカギになるそう。スムーズな置き換えを実現するには、耐用年数を見極める必要があるみたいです。

太陽のブロックを目的とした宇宙ベースのハイテクは、これが初めてじゃありません。2017年には、通信システムを混乱させてしまう太陽フレアを遮断するために、地球サイズの盾を提案した研究もありました。

リスクもコストも高い気候工学以外の解決策はもうある

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Image: MIT Senseable City

MITの研究チームは、宇宙バブルはあくまでもその他の気候変動緩和策への取り組みを補完するものと説明していますが、どうしていまこの段階で予期せぬリスクや想定外の事態に陥るかもしれない気候工学に頼る必要があるんでしょう? 石油やガスの新たな掘削計画の禁止のような、もっと合理的な気候変動対策にこそ、政治的な意思や資金、技術を使うべきだと思います。

そもそも、気候工学によって気温上昇を止めても、CO2をガンガン排出したらなんの意味もありませんよね。気候工学は、万が一の事態が起こった場合の責任の所在がハッキリしないのも問題点として指摘されています。最優先課題は、あくまでも急速な排出量削減です。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、壊滅的な気候災害を防げるレベルまで排出量を抑えるには、2025年までに国際社会が野心的な政策を作って実行しなければいけないと警告しています。現状はというと、いま存在する化石燃料のインフラだけでその壁を超えてしまうのだとか。でも、化石燃料の掘削をやめて脱炭素化に取り組めば、まだパリ協定の目標は達成可能です。

アメリカだけでも、南西部で貯水湖がいくつも干上がり、南西部を中心に危険な熱波が続き、全米のあらゆる場所で給水制限が実施されるなど、長年に渡るCO2排出による深刻な影響に苦しんでいます。私たちには、宇宙バブルの成功を願いながら、温室効果ガスを大量排出するこれまで通りの生活を続けるような余裕はありません。

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https://www.gizmodo.jp/2021/05/climate-change-is-making-space-debris-a-bigger-problem.html