ビリー・アイリッシュ初のオンラインライブ。リアルライブともMVとも違う“ならでは”の魅力を探る

  • author Jun Fukunaga
ビリー・アイリッシュ初のオンラインライブ。リアルライブともMVとも違う“ならでは”の魅力を探る
Image: Universal Music

今年1月に開催された「第62回グラミー賞」では、史上最年少18歳で主要4部門に加えて合計5部門を受賞。今や時代を象徴するポップスターとして世界中で人気を博すビリー・アイリッシュ。ここ日本でもグラミー賞の快挙以降、人気が爆発し、6月には現代アートの巨匠、村上隆とコラボした「UT」コレクションがユニクロでも販売されるなど、一気にメジャーな存在になった印象があります。

そんなビリー・アイリッシュが、日本時間10月25日午前7時より、自身初のバーチャルライブとなる「WHERE DO WE GO?オンラインライブ」を実施。世界中のファンに向けた同ライブではLEDを搭載した30m×7.3mの360度スクリーンで囲まれた18m×7.3mのステージで、3D映像を融合させたXRライブが展開。リアルとバーチャルが交差した世界観がファンを魅了しました。

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ビリー・アイリッシュのトリビアクイズ

ライブ当日は、本編開始の1時間前からプレショーも実施。こちらではビリー・アイリッシュの実父であるパトリック・オコネルが冒頭で登場したほか、リゾやアリシア・キーズ、スティーヴ・カレルらがリモートでゲスト出演。11月に控える大統領選挙の投票を促すコメントが届けられました。

さらに来年公開予定のドキュメンタリー『Billie Eilish: The World’s A Little Blurry(ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている)』の未公開映像が初解禁されたほか、今年3月のマイアミ公演でも公開されたボディ・シェイミングに対するメッセージショートフィルム「NOT MY RESPONSIBILITY」の配信やビリー・アイリッシュのトリビアクイズなども行われたため、プレショーに参加することで、リアルライブさながらの“開演を心待ちにする雰囲気”を感じることができたのも印象的でした。

また、ライブ前+ライブ後にアクセスできるファン向けのバーチャルルームには、Tシャツなどグッズが購入できる物販ブースの「STORE」を始め、ファンによるカバー動画やファンアートが展示された「FANS」、Spotifyと連動して曲が聴けたり、アナログレコードを購入できる「MUSIC」、そして、ビリー・アイリッシュがかねてから訴えている気候変動、ヘルスケアなど社会問題を紹介しながら、その解決策となるアメリカ大統領選への投票を呼びかける「VOTE」が用意されており、バーチャル空間に設置されたものではありますが、こういったブースは、リアルライブの会場でも見かけられそうなものだっただけに、バーチャルでありながらもライブに参加しているような雰囲気を高めてくれていました。

“リアルライブを思わせる体験”でいえば、配信画面のサイドバーに設置されたチャットボードの英語版では、ライブ前に見知らぬファン同士が年齢を聞きあうなどのコミュニケーションも見られ、リアルライブの会場での一幕を思わせる部分でした。おそらくこのやりとりは、ビリー・アイリッシュが投票を呼びかけているからこそのものだと思いますが、こういった彼女のスタンスに共感したファンがバーチャルの世界に集まり、ライブ体験を共有するというのも今回の醍醐味のひとつで、会場に集まるという現実の追体験を思わせるものでした。

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宇宙空間での兄フィニアスとの「i love you」

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深海で歌う「ilomilo」

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MVの世界観を再現した「my future」

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巨大な蜘蛛が現れた「youshould see me in a crown」

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ステージ上を車が走り回る「bad guy」


そして、午前7時からのライブ本編は、約1時間にわたって行われ、昨年リリースされたアルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』収録の「bury a friend」「xanny」「when the party’s over」「bad guy」といった人気曲やアルバム以降のシングル「everything I wanted」「No Time To Die」「my future」など全13曲が披露されました。

ライブのXR演出の部分では、以前のリアルライブでの演出を踏襲した宇宙空間での兄フィニアスとの「i love you」、深海に沈み、巨大なサメが徘徊する中で歌う「ilomilo」、アニメ調のMVの世界観をそのままに再現した「my future」など、バーチャルライブならではの現実ではありえない空間をフルCGで演出する表現が見られた一方、巨大な蜘蛛が現れた「youshould see me in a crown」、ステージ上を車が走り回る「bad guy」のように演者の周りを囲むように設置された360度スクリーンを使った現実世界での演出にバーチャルのレイヤーを重ねることで演出自体を強化する拡張現実的な演出も見られました。

バーチャルライブは、これまでどちらかひとつのXR演出が採用されることが多い印象がありましたが、今回のライブでは、先述の2つのXR表現がハイブリッドされる形で演出に取り入れられていたため、現行の最先端バーチャルライブ技術を駆使したものだったと言えるでしょう。

また、XR演出がライブに没入するためのひとつの要素であるとすれば、配信画面のサイドバー機能のひとつ「SHARE THE MOMENT」もその要素に。この機能ではライブ中のお気に入りの瞬間を収めて、SNSでシェアできルシステムだったのですが、ライブ中にたびたび機能の使用を促すアナウンスが画面上に表示されるなどインタラクティブなものであり、それによって配信されるライブをただMVのように視聴しているのとはひと味違う、ライブに参加する体験が可能になっていました。

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ライブを視聴中のファンの様子を集めたファンフォール

インタラクティブという意味では、「everything i wanted」披露時に登場したライブを視聴中のファンの様子を集めたファンフォールもそれにあたるでしょう。その一曲前の「all the good girls go to hell」終わりのMCでビリー・アイリッシュは、11月の大統領選に投票するように呼びかけていましたが、「everything i wanted」時に登場したファンフォールでは、ファンが音楽にあわせて歌ったり踊るだけでなく、期日前投票の証明書を示したり、メッセージボードを掲げるなど呼びかけに対するファンからの返答が見られていました。

「all the good girls go to hell」では、気候変動問題やブラック・ライブス・マターなど、現在の社会問題をテーマにした映像が大量に映し出されるなか、選挙に参加し、投票することでしか未来は明るくはならないとステージの背景に示された「No Music on a Dead Planet(死んだ惑星では音楽は鳴らない)」というテロップとともに訴えていたビリー・アイリッシュ。その呼びかけに応えることは彼女の考えに共感するファンにとっては非常に大きな意義があったはず。こういったインタラクティブな仕掛けによって、ファンの意思もリアルタイムで可視化され、別のファンとの間で共有される形になったこともバーチャルライブの特性を活かした演出になっていました。

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「死んだ惑星では音楽は鳴らない」と訴えるビリー・アイリッシュ

ライブ終了後24時間に限り視聴できたアーカイブもまた魅力的でした。コメント機能はクローズされていましたが、代わりにグループビューイングモードを使って、気のおけない友人たちと一緒にもう一度ライブを振り返るといった楽しみ方が可能に。バーチャルライブでは、リアルライブにはない再現性も、ライブを楽しむうえでの醍醐味のひとつになっていると言えます。

バーチャルライブは、最近ではリアルライブとMVのちょうど中間にあるものとして認識されつつあります。今回のライブでは、まさにその認識どおり、現実では表現できない作り込まれたライブ映像を楽しむだけにとどまらず、オンラインからプレショー含めライブに参加することでリアルライブの追体験ができつつも、リアルライブともMVともまた違った体験ができるものになっていました。

Source: Universal Music

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