スマホに人生をコントロールしてもらえばいいじゃん!『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』

  • author 中川真知子
スマホに人生をコントロールしてもらえばいいじゃん!『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』
Image: Jexi/IMDb

私の人生に必要なのはジェクシー。

このあいだ、無茶苦茶面白くてホラー映画並みに怖い作品を見ました。タイトルは『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』。

コメディなので笑えるし抜群に面白くて、でも同時にすごく怖いんです、本当に。それは、あまりにも私たちの今の生活と、デジタルネイティブの子供たちの将来をリアルに映し出しているようだから。今日は、8月14日公開のブラックコメディ『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』の魅力をお届けしますよ。

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』は今を反映している

本作は、コミュ障でスマホ依存症の男性フィルが、スマホを買い替えたのをきっかけに「持ち主の人生を向上させるAI」のジェクシーに振り回されるというストーリーです。持ち主とAIが心を通わせるやりとりを描いた『her 世界でひとつの彼女』と違い、ジェクシーはR-18な言葉遣いと行動で持ち主を翻弄していきます。

何が怖いかというと、オープニングクレジットの5分。あるある過ぎて自分の生活を見直したくなります。まず、レストランでの一コマ。親が親同士の会話を楽しみたいからと、退屈している子供に携帯電話を渡します。そんなことが当たり前のように続き、少年はすくすくとスマホ依存症に成長していくわけ。世の中の保護者の皆さんが心をえぐられるような描写から始まるわけです。

そして続くスマホ依存の人で溢れる街の様子。改めて見ると不気味です。美しい景色に目を向けることもなく、小さな画面に釘付け。小さな赤ちゃんすら、ベビーカーの中でスマホを握り締めています。うん、客観的に見ると世紀末。

しかし、フィルはスマホを買い換えたことでとんでもないAIジェクシーと出会うことになります。Siriより、Alexaより、Cortanaより遥かに優秀。だって、人生を向上させてくれるんですから。

AIがもたらす人生の向上とは

テクノロジーは私たちの生活を便利に、豊かにしてくれることを目的として開発されました。その進化は止まることを知らず、今や「人間をダメにするほど進化」してきていると、私は個人的に考えています。

身近なところだと、予測変換機能を使うことで、私たちはいとも簡単に漢字やスペリングをど忘れします。スマートデバイスを使うと、ちょっとした体を動かす機会を失い、脂肪を増やします。便利を追求すると、『Wall-E』の未来人のようになりそうで、末恐ろしくなります。

SiriやAlexa、Cortanaは、ユーザーの指示に従うサポートAIです。コマンドを理解できない、機能が対応していないという理由で従えない部分も多くありますが、「従順にしたがい」「ユーザーの生活を向上させる」のが彼らの役目です。

しかし、ジェクシーの任務は違います。ジェクシーは、過去のユーザーデータからレストランのオーダーの傾向を解析し、勝手に食生活を向上させるメニューをオーダーしてしまいます。Google Mapを使う時だって、ユーザーの運転技術やトラフィック状況を無視して、最短ルートや最長ルートを弾き出します。

現実社会に目を向け、ユーザーにより良い人生をもたらすため、友人作りや恋人作りのお手伝いだってしてくれます。もちろん、R-18な言葉遣いと手段を選ばない荒っぽいやり方で。もちろんそれだけでは済まなくて、大変なことになるのですが…。

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』の魅力

最大の魅力は、間違いなくAIのジェクシーでしょう。それと、フィルをはじめとする登場人物。基本的に、全員が魅力的です。

AIジェクシーは『インシディアス』シリーズや『ピーターラビット』シリーズのローズ・バーン。あのローズ・バーンが罵声を浴びせたり、デジタルセックスしたり、他のAIをメタクソに言ったり、絶妙な発音で『ポケモンGO』って言ったりするんですよ。あのローズ・バーンが。

フィルを演じるのは、『マイ・インターン』や『ロマンティックじゃない?』のアダム・ディヴァイン。良い人を具現化したような外見をしているコメディアン俳優で、子供たちの間では『おっはよー!アンクル・グランパ』のピッツァ・スティーブの声で知られています。

アダム・ディヴァイン演じるフィルは、コミュ障だけど、素直。ジャーナリズムを勉強していたという設定があるからか、どんな状況でも事実を客観的に捉えて物事を認めることができるんですね。

そして、ワンダ・サイクス演じる携帯屋さんのオバさんもサイコー。スマホ依存症野郎にズバズバと言いたい放題。「スマホ依存症はヤク中よりタチが悪い。」と外に出てリア充になることを口汚くアドバイスしてくれます。こういう店員、日本じゃ通じないだろうけど、私は個人的に大好き。

監督と脚本は、ジョン・ルーカスとスコット・ムーアのふたり。あのトラ映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』を書いたふたりです。面白いのも納得です。

『ジェクシー!』で変わるスマホライフ

『ジェクシー!』を見る前と後では、人生が(ちょっとだけ)変わるでしょう。

まず、スマホを両手で握りたくなくなります。そして、ズボンの尻ポケットに入れられなくなります。Google Mapではなく、地図を見たくなりますし、周囲の景色に目を向けたくなります。

それは決して便利さを手放すのではなく、選択を手に入れることです。フィルター越しではない、本物の景色に触れる。脳を甘やかさずに、鍛えることで自分を強化する。自分よりはるかにハイテクなガジェットにはしっかりと敬意を表する。考えてみれば、銀行口座を始めとするあらゆるパスワードが入った10万円超えの精密機械を、無造作にズボンのポケットに突っ込むなんて失礼なんですよね(月面着陸を成功させたアポロ11より優秀な機械ですよ!)。

『ジェクシー!』は、痛快なブラックコメディです。笑いに溢れています。声を出して笑うシーンが沢山あります。(映画評論サイトRotten Tomatoesでは、「笑いが足りない」なんて評価もありますが、私にしてみれば十分!)しかし、それだけでなく見終わったら自分の今の生活を振り返って、スマホライフを見直してみようと思える作品です。

私はできるだけ多くの人に『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』を見て欲しい。プラグイン・プラグアウトシーンとチンコ扇風機のシーンがなければ、孫にスクリーンを渡してしまうジジババ世代にも見て欲しいくらいです。

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』は8月14日(金曜日)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー。

Source: 映画「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」オフィシャルサイト

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