ガジェット化したクルマは自律的だし眼をダマす:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』第6話ガジェット解説

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  • author 西谷茂リチャード
ガジェット化したクルマは自律的だし眼をダマす:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』第6話ガジェット解説
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

Mobility:UNLIMITED。

ギズモードがガジェットコーディネートとして、作中のテクノロジー監修やガジェットの考案をしている『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。第6話は、第5話の緊張の展開に続く形で、物語が大きく動き出したと感じさせる回でした。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

第5話の犯罪に使われていた通信妨害装置と毒ガス発生装置……。その出どころを追う主人公・神戸大助(かんべ だいすけ)は、手がかりを求めてキーパーソン=井村和子(いむら かずこ)の取り調べを強行します。井村が乗っている電気自動車をリモート操作で危険運転させて、自らさくっと現行犯逮捕。

それも、危険運転の最後に人を轢いてしまったかのようなニセの視界をフロントガラスに映すことで、ショック状態で逮捕するという徹底的な演出ぶりです。これまでの話数でも遠慮のない大助でしたが、事件解決のために人のクルマまでハッキングしちゃうとは、超法規的すぎる。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

今回のガジェット解説は、クルマの近未来についてです。

人類の永遠の課題である少人数の移動手段(モビリティ)がいまこれまでにない大きな転換期を迎えています。徒歩、籠、馬、自転車、クルマときて、とうとうガジェット化が始まりました。

特に自動運転の影響は大きいので、井村のクルマを題材にモビリティの未来を考えていきましょう。たぶん想像以上にリッチな未来だと思います。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』は毎週木曜24時55分からフジテレビ“ノイタミナ”ほか各局にて放送中。各放送・配信情報などはこちら

自動運転の「いま」がよく分かる車体

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
サイドミラーもありません。おそらくカメラ式。

井村のクルマは、自動運転機能ヘッドアップディスプレイ機能が付いた電気自動車(EV)です(加速音がヒュイーンとかっこいいのがポイント)。

自動運転とはすなわち、クルマが自らをコントロールして自律走行できるということです。自動車業界では、その未来に至るまでの段階を大きく5つのレベルに分けて考えています。

レベル1〜3は、自動ブレーキや高速道路でのレーン保持などのアシスト機能やそれらの組み合わせ。レベル3〜4は条件付き(要監督者、指定地域限定など)の全自動運転で、レベル5がいつでもどこでも走れる完全な自動運転です。

一般的に、2020年のいま市街地で走っているクルマは、自動運転に関連する技術を搭載したものだと大体レベル1〜2のあいだにあります。レベルが高いものでも2〜3くらいで、一部でやっとレベル3〜4がテストされている状況。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
「MODE: AUTODRIVE」。

井村のクルマは、おそらくレベル3〜4のどこかです。「東京のX区内ならドライバーの監視下で自動運転機能をオンにしてもよい」などの取り決めのもと、テスターとして走行データを集めていたのでしょう。

そして集めたデータを元に自動運転ソフトウェアを改良し、スマホやパソコンのようにアップデートを行なうことで、機能を徐々に高めながら自動運転システムのレベル上げをしていく算段。なので必然的に車体にはレベル5完全自動運転のためのハードウェアが揃っていたのでしょうが……大助に乗っ取られて危険運転の演出に悪用されてしまいましたね。

ソフトウェアがハードウェアの挙動を支配し、その挙動が命に直結する時代。ことさらセキュリティが大事になってきました。

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セキュリティがしっかりしていれば……。

ちなみに井村のクルマをリモート運転していたのは大助のAI執事ヒュスクで、見たところレベル4以上の運転スキルを獲得しているのは確実のようです。肝心な質問に答えてくれないのは怪しいですが……マジ優秀。

ヘッドアップディスプレイ

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Image: Shutterstock

では、自動運転によって運転関連のタスクから解放された人間はなにをすればいいのでしょうか? 答えは簡単。自室でするようなコトをすればいいんです。

たとえばシートを倒して昼寝をしたり、スマホをいじったり、ワーカホリックな方だったら仕事を始めるのもありですね。要は人目を気にしなくていい、自分しかいないタクシーということです。

そういう未来が見えているのであれば、最初から車内をオフィス・エンターテインメント空間として作った方がいいですよね。

そこで、ヘッドアップディスプレイ

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

フロントガラスにディスプレイ機能を付与することで、視界にデジタル表示を重ねられるスマートグラスのような効果をフロントガラスいっぱいに広げることができます。こうすれば、自動運転中はフロントガラスに映画などの映像コンテンツを表示できますし、車内スピーカーシステムを高級なものにアップグレードすれば、ちょっとした(走る)ホームシアターになります。でっかいガジェットですね。

もしドライブしたい気分なら、ヘッドアップディスプレイをつかって道にルートを重ねて表示することも可能です。従来のカーナビだと画面を確認するために路面から視線を外すタイミングが発生してしまいますが、ヘッドアップディスプレイなら視界に映る路面に直接ルートを重ねることができるため、その心配がないという利点もあります。

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ただし、運転中に不用意に視界を遮らないよう、堅牢なセキュリティ機能が必要です。大助が井村のクルマを乗っ取った際は、人を轢いてしまったかのようなフェイクの路面状況を映すことで、井村の眼をダマしていましたからね…。危険運転で動揺しているときに、コレはエグい。

Fulfillment as a Service, for the rich

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

ここからは井村のクルマのその先にある未来を考えてみましょう。怖いことばかりではないんです。

自動運転でクルマが勝手に走れる時代……、車内はパーソナルスペースと化しました。そしてタクシーは運転手付きのものが減っていき、多くは自動運転のロボタクシーが取って替わっていきます。

その影響で人件費が削られ、タクシー料金はガクッと低下。より気軽にタクシーが使える世の中になり、人々は自家用車を買うのではなく、ロボタクシーのサービスにサブスクするようになります。また、副作用として路上駐車も減りました(ロボタクシーなら手軽に乗り捨てできるため)。

新しい市場に反応して乱立するロボタクシーサービスたち。その内の1つが、差別化のためにAV機能を強化したロボタクシーを打ち出します。ホームシアターとして呼び付けてもよし、ビデオ会議システムとして通勤時間を勤務時間に変換するもよし、友達と乗ってカラオケ代わりに使ってもよし…。

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Image: Shutterstock

すると今度は別のサービスが、人以外にも宅配ロボットやドローンを乗せるのもOKにしました。物流センターで乗せた宅配ロボ・ドローンは、オンラインショッピングの段ボール箱を運び……飲食店で乗せた宅配ロボ・ドローンは、出前を運ぶといった具合。この流れで、あらゆる細かい物流が自動化されていきます。

打って変わって、いろいろ試してから買いたい洋服や靴まわりの小売に関しては、店頭そのものがクルマに乗っかってやってくるようになりました。また、町中どこにいてもコンビニや公共トイレが走り回っているため、大抵の用事はどこでも済ませられるようになりました。

……と、そんなこんなで自動運転が触媒となって人と物資の移動がどんどんサービス化されると言われているんですね。人の移動をシームレスにするMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と、物資の移動をシームレスにするLaaS(ロジスティクス・アズ・ア・サービス)です。

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Image: Shutterstock

で、これらのサービスが普遍的なインフラとなったとき、人々はもはや「移動」を考えなくなるかもしれないと想像できます。というのも、社会にあるモノやコトのほとんどが超簡単にアクセスできるようになるので……。

たとえば「マッサージを受けたい」と願ったら、現れたロボタクシーに乗れば勝手にマッサージ店にたどり着きますし、なんだったらマッサージ部屋そのものが家に来てくれるかもしれません(人 or ロボットはお好みで)。このように、どこになにがあるのかを意識することなく、あらゆる願望が叶うわけです。

そうなったらもはや、MaaS&LaaSの組み合わせはお金があれば使える願望実現サービスといえますよね。未来ではいま以上にお金が最強のガジェットと化しているんだろうなぁという事です。

あぁ…リッチになりたい!!!


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