可能性はあるけど、可能じゃないかもってそれ、宝くじみたいなものなんじゃ…。
プラスチックの代わりとして、バイオプラスチックが注目されるようになってきました。でも、環境に良さそうなイメージとは裏腹に、海、川、街、そして地球の堆積物を窒息させていたりするのです。
バイオプラスチックにかかる期待と疑問
名前に「バイオ」がついていたり、パッケージがやたらと緑色だったり、ラベルにはどうやってトウモロコシや生分解できる素材から作ったかを強調したりしているものだから、なんとなく自然なんじゃないかと思わされてしまっていますよね。
バイオプラスチック製のカップを見て、数週間から数カ月かけて自然に分解されてできた堆肥を使ってトウモロコシを増やせるって想像すると、なんて魅力的なんだって思って当然です。でも、それは機能していないリサイクル制度を利用して、バイオプラスチック産業が植え付けようとしている夢でしかないみたいですよ。
混乱を来しているバイオプラスチックの現状は、赤道から極地域までくまなく汚染している大量のプラスチック廃棄物をどうすればいいのか、良い解決策がないという事実を浮き彫りにしています。
160年以上前に産声をあげたバイオプラスチックは、ここ数十年間で需要と生産量が急増しています。Institute for Bioplastics and Biocomposites(IFBB)によれば、2018年に世界で生産されたバイオプラスチックは260万トンだったそうです。これは生産されたすべてのプラスチック3億トンのほんの一部でしかありませんが、IFBBは2023年までにバイオプラスチックの生産量が65%増加すると予測しています。
バイオプラスチックは本質的に悪いものというわけでもないんですよ。ちゃんと扱えば、2050年までにプラスチックによる炭素排出量を最大3.8ギガトン削減できるんです。でも、この「ちゃんと扱えば」がミソで、今のところ世界はほとんどちゃんとできていません。
条件が揃わないと生分解されないバイオプラスチック
バイオプラスチックは、植物から作られるものと、藻類から作られるものの2つに分類されます。どちらも、時間が経つと生分解します。バイオプラスチックを製造している企業は、石油由来のプラスチックよりも環境に優しいと思わせるために、地球にやさしそうな 「バイオプラスチック」 という名前をつけたのだとか。
アリゾナ州立大学で藻類を原料とするプラスチックの研究をしているTaylor Weiss氏は、Eartherにこう語っています。
バイオプラスチックは科学ではなくマーケティングの一環として利用されてきました。企業はたとえ実際に生分解できそうになくても、理論上は可能だという理由で『これは生分解性だ』と言ってるんです。
もっとも一般的なバイオプラスチックは、ボトルやカップなどの代わりになる硬質プラスチックのPLA(ポリ乳酸)です。生分解性のPLAを、企業は「Planet+」や「Repurpose」のような名前を使って宣伝しています。でも肝心なのは、PLAでできた製品は適切な施設で適切に処理しないと堆肥化できないのに、それが内緒にされていることです。
Weiss氏によれば、PLAは時間とともに分解されるものの、そのためには工業施設が必要なのだとか。
ゴミ箱に捨てても生分解処理をしてくれる施設に辿り着くことはありません。米環境保護局(EPA)によると、バイオプラスチックと石油系プラスチックを混合すると、正しくリサイクルできないそうです。そしてほとんどの自治体には、生分解性プラスチックを回収するサービスがありません。つまり、生分解性プラスチック製品は通常、埋め立て処分されちゃうみたいなんです。
意味ないじゃん。
中国がほとんどのリサイクル可能な物品の輸入を禁止してから、元々処理能力がなかったアメリカではリサイクル品のほとんどが埋め立て処分されています。よろしくないことに、埋め立てられたPLAは分解されると植物由来の本領を発揮して、温室効果ガスを排出します。
Weiss氏によると、埋め立て地で生分解されてしまうと、最終的には良くて二酸化炭素、最悪の場合は非常に強力な温室効果ガスであるメタンになってしまう可能性があるのだそうです。ダメじゃん。
植物由来なのに、生分解されても土に還ることなく、残骸はゴミの山で腐り果てていくんですって。
それリサイクルじゃないし。
藻や細菌が原料のバイオプラスチックであるPHA (ポリヒドロキシアルカン酸)は、プラスチックの環境負担を減らす効果的な手段で、循環型経済に近づけそうな感じです。でも、PLAよりも高くつくうえに、PLAと同じように適切な分別とリサイクルが求められるそうです。
イギリスのプラスチック処理制度のように、生分解できる可能性がどれくらいあるかを明記したラベルをつけるなど、問題を解決する方法はあります。また、バイオプラスチック産業の規制を強化し、自治体が住民に周知徹底すれば、バイオプラスチックをちゃんと扱えるようになるかもしれません。でも、それよりもなによりも、最善の解決策は、バイオベースであろうとなかろうとプラスチックの使用量を減らすことです。
プラごみは世界規模の問題です。バイオプラスチックは魅力的な特効薬に見えるかもしれませんが、副作用には注意が必要です。