『スター・ウォーズ』のプロデューサーならではの責任と悩み。
スカイウォーカーの物語の最終章となる映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。今回はそのプロモーションのために来日した監督、プロデューサー、そして出演俳優たちにインタビューをしてまいりました!
ジョン・ボイエガ&オスカー・アイザック、J・J・エイブラムスに続き、今度は『フォースの覚醒』以降の『スター・ウォーズ』映画すべてのプロデューサーにして、ルーカスフィルムの社長でもあるキャスリーン・ケネディにインタビュー!
J・J・エイブラムスを監督に再起用した過程や、プロデューサーとして下した難しい決断などたくさん伺っております。
ちなみに、このインタビューは公開前に行なわれたものでネタバレはありませんが、気になる方はお気をつけください。
「『スター・ウォーズ』をどう終わらせるかは悩ましいもの」
── J・J・エイブラムスに監督は今回の監督を頼まれた時に悩んだと言っていましたが、どうやって説得したんでしょうか?
キャスリーン・ケネディ(以下、ケネディ):それでも、すぐに引き受けてくれました。『最後のジェダイ』を自分でやればよかったと思っているんじゃないかとすら感じました。
── 彼との仕事はいかがですか?
ケネディ:素晴らしい想像力の持ち主で、『スカイウォーカーの夜明け』の最後の戦いのアイデアは中でも凄まじいものとなっています。彼はILM(ルーカス・フィルム傘下のVFX会社)とも何度も一緒に仕事をしていることもあって、彼らの全力が引き出せたものとなっていると思います。
彼ほどまでの『スター・ウォーズ』への熱い思いと想像力を持った人が作品を作り上げるのは見ていてワクワクさせられますよ。
── 最初に完成した脚本を読んだときの感想はいかがでしたか?
ケネディ:心に響き満足の行く結末だと思いました。素晴らしいキャラクターたちを再集結させ、彼らの友情を描くことができるまたとない機会となりました。そこにさらにJ・Jが得意とするユーモアがつまっていて、楽しさでいっぱいと感じましたね。
── 今作では今までのような追加の撮影はありましたか?
ケネディ:今回はポストプロダクションのための時間が今までより短い代わりに、かなり長い撮影期間を設けながら、第二班(セカンドユニット。状況説明やアクションなどのシーンを撮影する)も多用し、しっかりと事前に色々と決めて素早く撮影を進めていきました。なので再撮影、追加撮影はあまりしていません。
── この作品で物語は一旦の終わりを迎えますが、すべての謎は明らかになるのでしょうか?
ケネディ:それは個々人が抱いているもの次第だと思いますが、多くの人が答えを得られたと感じられると思います。それと同時に、ありとあらゆるものを定義づけせず、ファンがこれからのストーリーを楽しみにできるような謎の部分も残すようにしてあります。だからこそ『スカイウォーカーの夜明け』というタイトルなのですよ(笑)。
── 今までいろんな『スター・ウォーズ』映画を手掛けてきていますが、今までで1番難しかった決断はなんでしょうか?
ケネディ:やはり終わらせ方を決めるのが1番難しいものだったと思います。本当にたくさんの人に愛されているものであり、本来ジョージ・ルーカスが9作で終わらせると考えていた『スター・ウォーズ』をどう終わらせるかは悩ましいものでした。
── エンディングは誰が決めたのでしょう?
ケネディ:誰か一人が決めたというよりは、会話をする中で生まれたものですね。
── 大変なものといえば、プロデューサーという仕事は制作資金を配給などの会社から引っ張ってくるのも大変だと聞きますが、『スター・ウォーズ』のような映画の場合でも難しいのでしょうか?
ケネディ:幸いにも『スター・ウォーズ』はウォルト・ディズニー・カンパニー(ルーカス・フィルムの親会社)から素晴らしいサポートを得ることができています。
社長のボブ・アイガーは『スター・ウォーズ』の大ファンであると同時にジョージ・ルーカスとも親しく、ジョージが『スター・ウォーズ』をいつかディズニーの作品にしたいという夢を持っていたことも前から知っていた人です。
非常に恵まれた立場で仕事ができました。だからといってすべてが簡単だったわけではありませんが、やりたいことをやらせてもらえました。
── この三部作を作る上で欠かせなかった人をあげるとしたら誰ですか?
ケネディ:ジョージ・ルーカスですね。彼が『スター・ウォーズ』を作ってくれましたからね(笑)。
── 今作には特に関わってはいないわけですよね?
ケネディ:もちろん非常に協力的で、なにか聞きたい事があれば答えてくれますが、すでに引退されていて、直接関わってはいない形です。
今は彼は家族との時間を大切にしながら、ルーカス・ナラティブ美術館(Lucas Museum of Narrative Art)の方に力を注いでいますね。
── ルーカスの名前が挙がったのでお聞きしておきたいのですが、このシークエルを10年後、20年後、特別編的な形で改めてCG等に変更を加えて公開する予定はありますか?
ケネディ:今のところはそういうことはしない予定です。このままにして、新しいストーリーを作ることに注力していきます。
── 個人的にビリー・ディー・ウィリアムズがランド・カルリジアン役で再登場してくれるのがすごく嬉しいのですが、出てもらうのは大変でしたか?
ケネディ:全然そんなことはありませんでしたね。彼はとにかくランド・カルリジアンが好きで好きでたまらないので、すぐに出演してくれることになりました。彼自身、もうランド・カルリジアン役で出ることはないだろうと思っていたようなので、喜んでいましたよ。
プロデューサーとしての仕事、後継者へのメッセージ

── そもそも『スター・ウォーズ』全体を仕切ることに決まった時、どんな気持ちでしたか?
ケネディ:大きな責任に圧倒されたことをよく覚えています。そもそも自分が作り上げた作品ではなく、ジョージ・ルーカスに頼まれて参加することになったので、とにかく彼が作り上げたものを守らなきゃという気持ちでした。
だからすぐ『スター・ウォーズ』のことを学ばねばなりませんでした。たくさんのことを知っているファンに敬意を払っているので、自分もしっかりと勉強しました。
それと同時に、私が持つ映画作りへの愛と情熱、そして経験を『スター・ウォーズ』にどうやって持ち込めるかを考えました。そしてジョージ・ルーカスが重視したものをストーリーに組み込みつつ、ストーリーを面白く心を揺さぶるものにしようと決心したのです。そして幸いにもそのジョージ・ルーカスが作り出したILMのサポートを受けることもできました。
おそらくジョージ・ルーカス自身も最後の三部作を実際に映画にするかどうかは決めていなかったと思いますが、実際にこの三部作を作るということに私を含め誰もが興奮していました。
── 沢山の作品を手掛けていらっしゃいますが、今までやったなかでベストな仕事ができたなと思う作品はなんですか?
ケネディ:この映画ですね。芸術性の高いVFXなど、本当に様々な努力がつまった壮大なスケールの特別な作品で、誇りに感じています。
── 色々大変なことは合ったと思いますが、途中で辞めたいと思ったことはなかったですか?
ケネディ:すごく楽天的な性格なので、そういう事は考えませんでした。この映画に関わった他の皆と同じく興奮しっぱなしでしたよ。
── このシークエル(今の三部作)を含め、ここのところすべての『スター・ウォーズ』映画のプロデューサーを務められていますが、一旦の終わりを迎え、休みは取れそうですか?
ケネディ:幸いにもこれから年末の祝日になるので、ちょっと休むことは出来ますが、ドラマの『マンダロリアン』の続きを作っていくのですぐ忙しくなっていきます。
ちなみに8月の東京五輪の観戦のために日本にまた戻ってくる予定なので、それが今は楽しみですね。
── 何年先になるかわかりませんが、いずれ『スター・ウォーズ』映画を他のプロデューサーに託すことがあると思います。その後継者にはどんな言葉をかけようと思っていますか?
ケネディ:とにかく真剣にやれと伝えたいですね。『スター・ウォーズ』はたくさんの人にとって大事なものなんだということを、念頭におくべきです。世代を超えて愛され、そのストーリーが家族を一つにするという珍しい作品でもあります。この映画をホリデーシーズンに公開したいと思ったのもそういう理由があります。
とにかくこれからを引き継ぐ人には、時間をかけてそういった価値を保てるようにするよう率直に伝えたいですね。
難しい決断を下し続けてきた名プロデューサーが最高の仕事だと断言する『スカイウォーカーの夜明け』本当に楽しみ。ただ、まだまだここでキャスリーン・ケネディ氏の活躍は終わりではなく、今月末公開となる『マンダロリアン』を含め色々用意されているようなので、これからも名采配に期待です!
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は12月20日(金)日米同時公開。
Source: 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』公式サイト