照明? テーブル? ソニーがミラノで見せたロボットの新しい形

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  • author 林信行
照明? テーブル? ソニーがミラノで見せたロボットの新しい形

これ、新しい照明?

天井から吊るされた大きな鳥かごのような球体。手を近づけると中にある振り子のアームがサーっと回転してきてかざした手をアームの先の光で照らします。かざしていた手を別の場所に動かすと、またアームが回転して、その後を追ってきます。

これって、一体なに?

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照らすロボットとそれをつくった英国ソニーのデザイナー、八代昇吾さん
Photo: Nobuyuki Hayashi

実はこれ、ソニーが提案する新しいロボットの形のひとつです。世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク」で展示されました。

ソニーと言えば、もともとかっこいい製品デザインで定評のある会社。そのデザインチームが普段からどんなことを考え、どう社会に関わろうとしているかがわかるのがデザインウィークでの展示です。

ソニーは昨年8年ぶりにこのイベントに復活し「HIDDEN SENSES」というタイトルで日常生活の中に目立たず溶け込むテクノロジーのあり方を見せていました。今年はそれをさらに進化させた提案を展示する展覧会「Affinity in Autonomy:」を開催。

「Autonomy」は「自律性」、「Affinity」は「密接な関係」のこと。これからの時代、日常生活の中に自動運転車やロボットなど、いちいち人間に指示されることなく、勝手に動き回る機械が増えていくことは、誰の目に見ても明らかですよね。でも、そうした機械が人間に威圧感や恐怖を与えるのは、なんかちょっと嫌。それなら、いったいどんな形になれば、私たちの日常に自然に溶け込めるのか

そんなテーマのもと、ソニーのデザイン部門は4種類のロボットの提案展示をしていました。

まずはコンセプトを示す公式の動画をどうぞ。字幕をオン、日本語を選びましょう。

Awakenings:センサーたちが目覚めた

まず、最初の展示は「Awakenings(目覚め)」。

細長い部屋に人が入ると、光の点が入ってきた人の格好を真似して動きます。最初は数個の点による大雑把な真似だったのが、部屋の奥に進むにつれて点の数が増えてきて、自分の格好をかなりハッキリと真似してきます。

この一連のながれは、まるで最近のテクノロジー機器の進化みたいです。例えばスマートフォンはタッチ操作や縦横回転から始まって、人の顔を認識したり、音声操作にも対応してきました。そして私たちの身の回りの機器に埋め込まれるセンサーは年々、その数も種類も増え続け、機械の側が人間社会を認識し、理解する能力がどんどん高まっています。そうしたセンサー情報を元にAI(人工知能)でできることも急速に増えつつあります。

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Photo: ソニー

我々はまさに今、新しい時代の「目覚め」を迎えようとしているのだ、そんなことを感じさせる展示でした。

Autonomous:まるで生き物のように

つづくふたつ目の展示は「Autonomous(自律)」。

冒頭で紹介した手足も顔もない照明型のロボットです。実はロボットのアームは振り子のアームになっていて、近くに人がいない間は見ていて飽きない振り子運動をしています。

担当したソニー英国支社に勤務の日本人デザイナーは、これから家の中で勝手に動く機械が増えたとき、それらすべてが人や動物の形をとることはなく、一部は家具のような形態もとっていくのではないかという考えを話してくれました。

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Photo: ソニー

今はただアームが動いて手を照らすだけ。人と対話をすることも、何か便利なことをしてくれるわけでもありません。でもこれ、試してみると、鳥かごの中の鳥がこちらに気がついて、餌をくれると思って近づくみたいで超生き物チックなんです。なんだか突然、照明に知性が芽生えたような、なんとも不思議かつ独特な存在感!

Accordance:群れのように協調

3つ目の展示は「Accordance(協調)」。

ロープで区切られたエリアに白いボールがたくさん置かれています。そのエリアに入ってみると、ボールが回転しながらサーっと人に近づいてきます。ボールは大小、さまざまなサイズがあって、動きの鈍いボールもあれば速いボールもあるのですが、それらがまるで動物の群れのようになって人に反応します。反応せず、どこかにいっちゃうボールもあったり……犬でもそういう個性的な子、いますよね?

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Photo: ソニー

他の人たちは「かわいい!」と喜んでいましたが、私は最初「な、な、なにコレ!?」とまるで未知の惑星にやって来てそこの原始生物に取り囲まれたかのような気もちょっとしてビビりました……。手塚治虫の漫画でこんなのがあったような気がして……。ただ、しばらくボールたちと戯れていると、だんだん、この顔もないボールたちが愛らしく思えてくるから人間って不思議。

いずれにしても、ちょっと未来の生活では家の中で勝手に動き回っているロボットは、ロボット掃除機だけでなく2体、3体、4体と年々増えていくだろうし、そうなってきたとき、各ロボットが個性を持って自分の仕事をしながらも、どこかでは群としても連携するって、こんな感じなのかな…とも思いました。

Affiliation:生活風景に溶け込む

つづく4つ目の部屋は「Affiliation(共生)」。

もはや、新型aiboが丸い台の上で展示されていました。私たちにはすっかりお馴染みの新型aiboですが、イタリアではこれがデビューだったようです。もっとも、ただのaiboの展示だと、私たち日本人をはじめ、見慣れている人も多いですよね。そこで展示の台にちょっとした工夫もこらされていました。

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Photo: ソニー

実はaiboの中のAIでは「驚き」や「喜び」や「怒り」といった感情が常に変化しているのですが、今、aiboがどんな感情バランスになっているかが台に光の色と形で投影されていたのです。どんなことをすると、どう感情が動くのかが可視化される台。aiboオーナーもちょっと欲しくなりますよね?

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Photo: Nobuyuki Hayashi

あと、もうひとつ面白かったのが、この部屋の端っこに何気なく置かれていた3枚のディスプレイ。aiboの目を含むセンサーには、世界がどんな風に見えているかをイメージしてつくられた作品です。そうか、aiboの目には世の中って点群(小さな点の集まり)に見えていたんですね! これ、なんだかアート作品みたいできれいだったので「これ、絶対にaiboオーナーにオプションで売った方がいいですよ!」と提案してきちゃいました(笑)。

Association:日常風景に溶け込んだロボット

この展示を終えて次の部屋に出ると、最初の日はカクテルパーティーが開かれていたのですが、実は展示はこれで終わりではありませんでした。 フィンガーフードやシャンパンを配ってくれるスタッフに混じって、なんだか全面鏡張りの立方体の箱がのろのろと人の波を避けながら近づいてきます。

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Photo: Nobuyuki Hayashi

そして私の目の前でピタっと止まると、立方体部分がせり上がってきて天板に何か表示されます。展覧会のアンケートでした(笑)。実はこれも「Association(共生)」という展示になっていました。今回の5つの展示の中では、唯一の実用性を備えたロボットで、これからの私たちの社会ではロボットが本当にいろいろな場所で活躍してくるようになるのだなと感じました。

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Photo: ソニー

ソニー クリエイティブセンターの長谷川豊センター長曰く「今回、aiboを除く展示のロボットでは、あえて球だったり立方体だったりと擬人化しないシンプルな形でも、その動きや振る舞いによって人々が感情移入できるということを示したかった」といいます。

ところでミラノデザインウィークって何?

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Photo: Nobuyuki Hayashi

ところで、説明せずに進めてしまいましたが、皆さんは「ミラノデザインウィーク」って知っていますか? ちまたでは、よく「ミラノサローネ」なんて呼んでいる人も大勢いますが、毎年4月に、ミラノの街全体を巻き込んで行なわれる世界最大規模のデザインイベントです。

今年の来場者は38.6万人。テクノロジー系で有名なCESの18万人程度と比べても圧倒的な規模の大きさがわかります。このイベント、実は家具の展示会がそもそもの始まりで、こちらは58年の歴史があります。「iSaloni」と呼ばれるイベントでいわゆる「ミラノサローネ」の語源です。

一口にサローネといっても、世界最大規模の家具展や世界最大規模のオフィス機器展、世界最大規模の照明機器展、プロダクトデザイナーたちの登竜門と呼ばれるサローネサテリテなど、それぞれが世界最大規模のデザインイベントの6つほどの集合体になっていて、これだけでかなり広くて1週間では回りきれません。凄い……。

でも、これがまだ氷山の一角なんです。実はこの展示会場の展示に加えて、おしゃれな街ミラノのそこかしこにある公共スペースや美術館、ファッション/インテリアショップなどでも数えきれないほどデザイン関係の展示が行われています。1ブロックも歩けば必ずデザイン系の展示を見かける状態。こちらを展示会場で行なわれるイベントに対してフオーリ(場外)サローネと呼びます。

細かいことをいうとトルトーナデザインウィーク、ブレラデザインウィークなど、地区ごとに分かれたそれぞれが街ぐるみの巨大デザインイベントの8個ほどのイベントが同時進行している形。もはや何がなんだかワケがわからない状態です……

ちなみにソニーさんの展示は、フオーリサローネの中の人気地区、トルトーナ地区の「TORTONA DESIGN WEEK」にあるファッションブランド、Ermenegirdo Zegnaのショールームで展示されていたものです(昨年と同じ会場でした)。展示会場はどちらかというと家具を買いに来たバイヤーさん向けのイベントなのに対して、街中で行われているフオーリサローネは、一般の生活者も大勢訪れるイベント。 先の38.6万人という人数は展示会場の参加者数ですが、デザイン関係者以外の一般の生活者たちなどフオーリサローネしかみない人も膨大な数いることを考えると来場者の数は、もはや計測不可能、桁外れに大きいことが想像してもらえると思います。

そんな展示会場で、ここ10年ほど日本の企業やデザイナーが物凄い存在感を放っているので、これから何本かの記事で紹介していければと思います。

おまけ

今回の展示の裏テーマは、世界に広がりつつあるセンサー。ソニーが車のセンサーもつくっているって知ってました?

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Photo: Nobuyuki Hayashi

会場には本物の犬も見にきていました。aiboとの対面みたかった……。

※この記事はレクサスからのイベントの招待を受けて制作されています。

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