ミラノデザインウィークで見つけたおもしろデザイン11選

  • 8,566

  • author 林信行
ミラノデザインウィークで見つけたおもしろデザイン11選

壁際に本が並んでいる。でも、よく見ると……本棚がない。

手がけたのは、座れる絵や2世代目のLyric Speaker「COTODAMA」なども手掛けた小野直紀と山本侑樹の二人組による今、注目の日本人デザイナーユニットYOY」。

190428_yoy
Photo: Nobuyuki Hayashi (Edit: suzuko)

この本棚「SHELF」の「本の空中浮遊」を作り出すヒミツはふたつ。

ひとつは本がハミ出るくらいの小さい本棚になっていること。もうひとつはちょっと離れたところにも台座があり、本を1冊だけ斜めに立てかけられるようになっていることだ。YOYによる、存在をハックするデザインである。

190428_yoy2
花瓶はないのに、その影だけ映る「OBJECT」。YOYの展覧会「EXISTENCE」にて
Photo: Nobuyuki Hayashi(Edit: suzuko)

ミラノデザインウィークは、世界最大規模のイベント。その全貌を見渡すことはほとんど不可能なほどだ。ただギズモードも「Tech by Design」をキーワードにしていた歴史もあり、いいデザインが好きな読者も多いはず。そこで筆者が回ったミラノデザインウィークの展示の中でギズ読者も気に入りそうな展示をピックアップしてみた。

チャレンジャー求む、いかにも痛そうなイス

190426_salone_004
Photo: Nobuyuki Hayashi

YOYと並んで注目を集める若手デザインユニット「we+」が展示をしていたのは、こちらの椅子。メタルの構造体でつくられたチェア。これ、ちゃんと座れるんだそう。どうみても痛そうな感触しか思い浮かばない……。

横に置いてあるのはオットマン(足乗せ)かと思ったらそうではなく、これがイスを構成している基本構造とのこと。これがオットマンだったら完全に痛さ狙い。さすがに1点しかないイスなので展示期間中に万が一のことがあっては、と試せなかったが……。

デザインを手掛けたwe+は今回、グランドセイコーの展示も手掛けていた。こちらはイスとは違って、なんとも優美で美しい作品。自然な時間感覚を表現したインスタレーション作品だった。

流れるように動く秒針を持つ独自機構「スプリングドライブ」のグランドセイコーをイメージし、「刻む時ではなく、うつろい流れつづける時」という日本らしい時間の意識をテーマにした展覧会「THE NATURE OF TIME」。日本庭園の池のような水面に、時計の部品でできた花のようなオブジェが咲いており、そこから光を含んだ液体がジワーっと広がっているようすがとてもステキだった。

ちなみに、先のYOYとwe+、そしてTAKT PROJECTといえば、いま日本の若手でもっとも注目を集めているデザイナーユニット3組。この3組による展覧会「自生するデザイン」が5月13日まで松屋銀座7階デザインギャラリー1953で開催されていて、ミラノデザインウィークでの展示にも触れられているようだ。

巨匠スタルクとAIのコラボ椅子が誕生

190426_salone_005
Photo: Kartell

おもしろいイスをもうひとつ。

今年70周年を迎えるイタリアの有名家具メーカーKartellからは、世界初、AIがデザインしたイス「A.I. by Phillippe Starck」が発表された。AIにはあらかじめKartell社の家具のデザインやフランスの巨匠デザイナー、フィリップ・スタルクの作品を学習させていたらしい。

スタルク氏曰く「AIよ、AIよ、AIさん! 最小のマテリアルで我々の身体を休められるカタチを見せておくれ」と頼んだところ、アメリカのAutodesk社の協力もあって、今回のデザインができあがったのだとか。実際には形がでてきてから、それを製品に落とし込む細かい作業の方もスタルク氏が行なったようだ。

Kartellやスタルク、Autodeskにとっても良い経験になったようで、Autodesk社の展示でも椅子をつくるプロセスなどがビデオで紹介されていた。スタルク氏はそのできばえに満足したのか、Autodesk社の公式インタビューで「AIはすぐに成長し、より洗練されたフィーリングを持てるようになる。恋に落ちたり、恐れを感じたり、希望や夢を持つようになれば、天才になれるだろう」とまで語っていたようだ。

ヤマハの社内コンペで勝ち残った優秀作品たち

楽器メーカーのヤマハでは、デザイナーたちのモチベーションや感度を向上させるために、社内デザインコンペを開催し、優秀作品をミラノデザインウィークで展示することにしたそうだ。なんともステキな計らい! ほかの企業でもマネして欲しい!

そんな厳しい社内コンペを生き残った4作品が展示されたのが「pulse」という展覧会。

190426_salone_006
Photo: Nobuyuki hayashi

お嬢ちゃん、絵は触っちゃダメだよ!と声をかけたいところだが、この絵はタッチOK! 最初に飾られていた「Pianissimo Fortissimo」は弾ける絵画。ただのピアノの絵ではなく、弾けるピアノの絵になっている。こんな絵がリビングに1枚あったら、ホームパーティーが盛り上がりそう。子供たちの間でも人気だった。

Fine Rainy Days」は、雨音を楽しむビーズの入った砂時計。3種類のカプセルにレンガ、トタン板、石畳などの建築部材が入っていて、それぞれの雨音を楽しみつつ、喜怒哀楽のどれでもない感情を楽しむことができる。静かなところでひとつずつ聞いてみたい。

一方、私が一番好きだった作品はこちらの「Kinetic Silence」!

円盤に街中の風景などが描かれたプレートが4つ。例えば街中の絵が描かれた作品からは人々の話し声や車の音が、工場が描かれた絵からは組み立て機械などの音が聞こえてくる。手元にダイアルが置いてあり、これを回すと絵が回転を始めるだけでなく、音もだんだんと混じり合っていく

環境音は意識を傾けるとひとつひとつの音を聞き分けられるが、ある瞬間からいろいろな音が混ざりあったひとつの「環境音」になってしまう。あの感じを表現したかったのだとか。これはかなり楽しかった。

190426_salone_007
Photo: Nobuyuki Hayashi

Sound Gravity」では、改めて楽器というモノの魅力に注目。楽器は見ているだけでも美しく、手に触れても心地よい。あの魅力を重力場として表現している。

靴を脱いで楽器の置かれた台にあがり、改めて楽器を抱えてみると、実は楽器に振動板がついていて音が鳴っているのがわかる。この展示もかなり人気があった。

学生によるデザインプロジェクト

ミラノデザインウィークの出展者は多種多様だ。メーカーも出展していれば、デザイナーが個人で出展していることある。セレクトショップが出展していることもあれば、国がブースを束ねていることもある。いつもはフランスが人気だが、今年はオーストリアデザインの展覧会が大人気になっていた。日本は国での出展なし……。

一方で、学校が出展しているケースもある。慶應大学SDM(システムデザイン・マネジメント研究科)は、ここのところたびたびトルトーナ地区に出展している。今年も「Break the Bias」をテーマに4つのソリューションを展示していた。学生たちによる2つのプロジェクトを紹介しよう。

ひとつは「AirLens Design」。黒い布が展示されているが、これは形状記憶ができる布だ。手でポンポンやっていると自然と折り鶴の形になるのだとか……ほぉ、これはおもしろい。

ところが、実はそれだけではない。せっかく折り鶴の形にしたものを元の平の布に戻してよくみてみると、黒い布の真ん中の辺りに小さい穴がたくさん空いている。この穴を通して見ることでピンホール効果により目が弱くなってきたお年頃の人でも小さな文字がハッキリ読めるのだとか。つまり、老眼鏡がわりにもなるのだ。

なるほど、普段は折り鶴としてデスクに置いておいて、いざという時に老眼鏡に使うという使い方なのか……?

もうひとつは「Co-fuu」。巨大なぬいぐるみなのだけれど、ハグするとその強さなどに応じてゆっくり呼吸……って息をしているわけではないのだが、呼吸するようにふくらんだりしぼんだりする。なんだか、抱いていると凄く安心感があって、会場を訪れた女性たちから大人気の展示だった。

※この記事はレクサスからのイベントの招待を受けて制作されています。

修正(2019年5月1日16時41分):初出時、デザインユニットwe+をwe+ design、イタリアの会社であるKartell社を「ドイツKartell」と誤って記載していました。修正してお詫びします。

    あわせて読みたい

    powered by