たった1羽の鳥が生んだ、22万3000ドルの経済効果

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たった1羽の鳥が生んだ、22万3000ドルの経済効果
Image: Ricardo Medina C/Shutterstock

レア鳥ゲットだぜ!(ゲットはしちゃだめ)

ポケモンGoのアップデートが話題になっていますが、ここでポケモンファンに私がおすすめしたいのが野鳥観察です。基本的なルールはポケモンGoと同じですが、野鳥観察はなんとAR(拡張現実)どころではなく、現実です。なんとリアルな野鳥が現実に現れるんです。しかも捕まえないのでポケモンボールが不足するという心配もありません。早朝起きて双眼鏡を手に取り、遠くまで移動してレア鳥を追いかける。ポケモンGoのパクリかな?というくらい類似点がたくさんありますよね。

野鳥観察なんで昔の趣味…と侮ることなかれ。なんと今年はじめには珍しい野鳥が目撃され、そこに野鳥観察愛好家たちがこぞって押し寄せたことで、22万3000ドル(約2531万円)の経済効果を生んだとオーストラリアの研究チームが発表しているんです。

話題のレア鳥はBlack-backed Oriole(以下、メキシコムクドリモドキ)と呼ばれるムクドリモドキ科の鳥。ペンシルバニア在住の鳥愛好家の一人が、1月26日に自分の裏庭のエサ箱にこのメキシコムクドリモドキがいることを発見したのですが、アメリカでこのメキシコムクドリモドキが目撃されたのはこれが2回目なんだそう。そうです、それまでたった1度しかアメリカでは見られていないんですね。その結果1,800人もの野鳥観察愛好家たちがこの人の家を訪れ、遠くからはカナダからもやってきたんだそう。4月10日にはメキシコムクドリモドキは飛び立ってしまったものの、1月から4月の4カ月間で来訪者1,800人という数字に驚いてしまいますね。

経済効果を計算したニューサウスウェールズ大学の研究者たちが科学誌「Human Dimensions of Wildlife」に寄せた論文では「バードウォッチャーのなかには珍しい鳥に価値をおいて、たくさんの時間とお金をかけて観察に励む人たちがいる」と説明しています。経済効果の数字を出すことで、自治体や政府による土地利用の参考になるかもしれないと期待しているようです。

野鳥観察コミュニティのなかには、かなりの心血を注いでいるバードウォッチャーがたくさんいます。また、多くは珍しい鳥の目撃情報をTwitterでシェアし合っています。Twitter、という名称は鳥のさえずりからきているので、なんともふさわしい利用方法ですよね。彼らは珍しい鳥を報告するホットラインにも毎週のように電話し、目撃スポットへと足を運びます。

渡り鳥が移動するシーズンや、メキシコやヨーロッパからの渡り鳥が来ている、といったニュースによって、バードウォッチャーの大群が押し寄せ、田舎道に渋滞が起きることもあるようです。

なかにはコンペティションを開催する人たちもおり、論文では次のように紹介されています。

オーウェン・ウィルソン、スティーブ・マーティン、ジャック・ブラックが出演した2011年のハリウッド映画『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』によってこういったコンペティションは話題になりました。「リスター」や「ツィッチャー」と呼ばれるこういった人たちは長い距離を移動し、珍しい鳥や渡り鳥を見るために多額の資金を費やします。映画で描かかれているように、彼らは野鳥観察を競い合うスポーツのように扱います

今回、研究者たちは訪問者の人数と彼らが費やしたお金を試算するモデルを使って経済効果を計算しました。また実際に訪れた人々にも直接調査をしたようです。家主は観に来た人のログを取っていたとのこと。人数の把握はかなり正確に行なわれていそうですね。

もちろん、実際の金額に対してどれほど正確かは疑ってかかる必要がありますが、研究チームが強調しているのは次の点です。

野鳥観察には、ホテル、レストランといった施設が活用できるような経済効果が潜んでおり、現時点ではそれはあまり活用されていないということです。たしかにこれだけの人をたくさん移動させ、一箇所に滞在させる力には感心してしまいます。まるでポケモンGoみたいですね。

Image: Shutterstock
Source: Human Dimensions of Wildlife, Wikipedia(1, 2), American Birding Assosiation

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文

(塚本 紺)