ハリウッドで活躍する27歳の日本人アーティスト・田島光二。プロが使うiPad Proの使い方とは「一番描き心地がいいのは純正のメモアプリ」
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ハリウッドで活躍する27歳の日本人アーティスト・田島光二。プロが使うiPad Proの使い方とは「一番描き心地がいいのは純正のメモアプリ」

27歳、ハリウッドの最前線で活躍する日本人アーティストをご存知でしょうか?

彼の名前は田島光二。現在ハリウッド映画の制作に携わる田島さんは、日本の専門学校でCGを学び、在学中に出会った3DCG制作をきっかけに現在のコンセプトアーティストのキャリアをスタート。

彼の腕前は、学生時代、インターネットに公開していた自主制作作品をきっかけに『スター・ウォーズ』のルーカスフィルムから就職のオファーが来るほど。しかし英語が話せず断念したルーカス・フィルムのオファーを糧に、その後ヨーロッパ最大のVFXスタジオ・Double Negative(ダブル・ネガティブ)にコンセプトアーティストとして所属しました。

最近では『ブレードランナー 2049』や『パシフィック・リム:アップライジング』などのコンセプトアートを手がけ、ハリウッドの最前線で活躍しています。

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Image: CLAUDETTE CARRACEDO
田島光二さん

そんな弱冠27歳でハリウッドのトップランナーとして活躍する田島さんは、どんなデバイスやソフトウェアを使って制作しているのでしょう? 今回は田島光二さんとお話し、コンセプトアートの仕事や制作環境にについて気になることを聞きました。

最近iPad ProとApple Pencilを使い始めた田島さん、実は一番描き心地がいいアプリは純正の「メモ」アプリなんだとか。

コンセプトアーティストとは、映画の世界観のデザイン。監督と2人1脚

──コンセプトアーティストというと、映画制作のなかでどんな役割なのでしょうか?

田島光二(以下、田島):大まかに言うと映画全体のデザインを行なう人ですね。監督やクライアントが考えている世界感やキャラクターを視覚に起こしていく役割です。なので映画制作の始めのほうから、監督と直接やりとりをして仕事していることが多いですね。

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『Attack On Titan』:自主制作した『進撃の巨人』のコンセプトアート。これをきっかけに実写映画『進撃の巨人』でキャラクターデザインを担当した。

──田島さんは、ティム・バートン監督の『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』でコンセプトアーティストとして参加していましたよね。そのときも実際にティム・バートン監督の隣で仕事したんですか?

田島:そのときは僕はシンガポール支社にいて、ティム・バートンはロンドンにいたので、実際にはリモートでやったんです。それでも何度も直接メールでやりとりしましたね。

面白かったのは、僕の絵の上から修正指示のスケッチを描いてくれたりするんですけど、そこに出てくる絵がめっちゃティム・バートンなんです。

──最近では、『ブレードランナー 2049』や『パシフィック・リム:アップライジング』などにもコンセプトアーティストとして参加されていますよね。ハウリッドの最新作のほとんどに関わっているような印象です。

田島:たまたま公開の時期が重なってしまって…。すごい働いている人みたいになっています(笑)。

──コンセプトアートのお仕事は、Double Negativeが制作する映画に田島さんが参加するような形なんですか?

田島:そうですね。僕たちアーティストが描いたコンセプトイメージをプロデューサーがまとめて、まずは仕事をとってくるところから始まります。制作することが決まったら、背景やキャラクターなど、役割を分担して映画をデザインしていきます。

なので、制作が決まる前に沢山コンセプトイメージを描いたのに、そのまま制作が決まらなくて流れることも全然あるんです。

──田島さんのコンセプトアートが完成したあとは、どのように制作が進んでいくんですか?

田島:完成したあとは、実制作に移ります。モデラーがコンセプトアートから3Dモデルに起こして、テクスチャー担当が色を塗って、リガーという人が3Dモデルを動けるように構造の仕組みを作ります。そのあとアニメーターが動きをつけ、ルックデブアーティストが細かい質感を設定し、ライティングアーティストが照明を調整して、合成担当が映像と合成していく流れですね。

なのでコンセプトアートを描いてからの作業がすごく長いんです。

──ご自身で描かれたコンセプトアートが作品として完成して、その映像を見たとき、どのような気持ちになるんですか?

田島:んー、一番は楽しいって感じますね。僕が書くのは絵なんで、2Dじゃないですか。それが段々3Dになって、実写映像と合成されて現実に居るかのようになっていくのは、自分の描いた絵が巣立っていくような感じです。だから描いているときから凄く楽しいんです。

意外にも、ルーツは普通の作品たち

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『KAIJU』

──田島さんは、モンスターとかクリーチャー系の絵を描くのが好きとお聞きしました。自主制作の作品を見てもそのように感じましたが、一番影響された作品はなんでしょうか?

田島:一番っていうと難しいですけど、たどると子供のときにみていた仮面ライダーとか、スーパー戦隊とかの影響は未だに強いですね。あとデジモンとかポケモンとか、モンスターとの触れ合いが多かった幼少期でした。割と普通のものばっかり見て育ちましたよ。

あとはゲームの影響とかも強いですね。『バイオハザード』とか『デビルメイクライ』、『ファイナルファンタジー』に出てくるモンスターが好きでプレイしていました。

それで専門学生になってから、ちゃんと特殊造形のアーティストの作品を見るようになり、それまでに興味があった色んなものが混ざって、今のリアリスティックな絵を描くようになっていきました。

──ちなみに最近見られた映画で一番面白かったものはなんでしょうか?

田島:最近映画に行けていないんですけど、『ワンダーウーマン』は面白かったですね。

──これも田島さんがコンセプトアートで関わられた作品ですよね。

田島:そうですね。ワンダーウーマンは背景のコンセプトアートをやっていました。

──なんかもう全部やってるんですね(笑)。

田島:うーん、そうですねぇ(笑)。カナダのDouble Negativeは全員で500人くらいいるんですけど、コンセプトアーティストは実は2人しかいないんです。なので同時に3、4作くらい掛け持ちでやっていますね。

ワンダーウーマンをやっていたころは、朝にワンダーウーマンを描いて、昼にブレードランナー、夜に『エクス・マキナ』の監督の次の作品(編集者注:『Annihilation』)を描いていた時期もありました。

iPad Proも制作に導入。「これ、iPad Proだけで制作した作品なんです」

──実際のコンセプトアートはどのようなソフトウェアを使って制作していくのでしょうか? 最初は紙にアイデアスケッチをしたりしますか?

田島:映画の作り始めのころでビジョンが曖昧なときは、スケッチから始めますね。そのときはPhotoshop上でスケッチを描いたり、鉛筆で描いたりもします。進んでくると、ZBrushを使って3Dで仕上げるときもありますが、そのままPhotoshopで完成させるときもあります。

決まった始め方とか仕上げ方ってなくて、アーティストによって本当バラバラですね。僕はPhotoshopか、ZBrushかです。

※ZBrush:3DCGソフトウェア。「スカルプティング」という、コンピューター上で粘土をこねるような方法で操作し、リアルなテクスチャーを表現・制作できる。以下、田島さんによるZBrushの作例。

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『Insect Warrior - WIP』
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──制作をされていると、マシンや液晶タブレット、ソフトウェアなど色んな最新のモノ触れると思うのですが、田島さんはガジェットってお好きですか?

田島ガジェット好きですよ! 昔から電気屋が好きで。

──最近のお気に入りのガジェットってなんですか?

田島:最近のお気に入りはトラックボールマウスですね。はじめて導入したんですけど、凄く使いやすいです。仕事では大きいディスプレイを3つ使っているんですけど、ディスプレイ間のカーソル移動がすごい速くて良いんですよ。

周りは僕しか使っていないんで、上司が僕のパソコンでレクチャーするときに「なんだこのマウス! 使いづらいな!」って言うんですけどね(笑)。だからクレイジーマウスって呼ばれています。

──聞いたのですが、iPad ProとApple Pencilを制作で使われているんですよね。

田島:はい、そうですね。ずっと欲しくて、ストアに行っては落書きを残しては去るみたいなことしていたんですけど。なかなか買うのに踏み切れなくて。

普段はプロ用の液晶タブレットを使っているんで、同じような用途のデバイスを買うのに少し迷っていたんですよね。でも使ってみると液晶タブレットと全然使用シーンが違っていて、すごく便利です。

──どういうシーンで使われるんですか?

田島:朝コーヒー飲みながらスケッチブックに落書きするんですけど、それをiPad ProとApple Pencilで描くようになりましたね。

日によって鉛筆で描きたい日と、筆で描きたい日と、ペンで描きたい日があるんですけど、iPad Pro1つで色んな画材を使えるのが凄くいいですね。しかもそれが、ノートと同じように取り回しできるっていう。

たとえばこれは「Procreate」というアプリで描きました。

──田島さんくらいの腕があると、iPad Proを使っていて絶対楽しいですよね。

田島:いやぁ本当、新しいおもちゃを手にいれたような感じですよ。

──お仕事の制作でも使われているんですか?

田島:はい、最近使うようになりましたね。実験的に取り入れてみたんですけど、けっこう仕事でも使えるんですよ。もちろん細かい調整をしようとすると、パソコンで制作するときと比べて何工程か手順が増えますが、ちゃんと完成まで持っていけます。

Image: TM&©️ TOHO CO., LTD.
ゴジラ・ストア Tokyo:新宿丸井アネックス1F 10月30日(月)オープン

田島:このゴジラは、iPad Proだけで制作した作品なんです。この作品が初めてiPad ProとApple Pencilで制作したんですが、意外と完成まで辿りつけました。ちなみに「SketchBook Pro」というアプリを使っています。

──あとこの前、スプリット・ビュー(iPadならではのiOSのマルチタスク機能)でYouTubeをみながら、絵が描けるのがいいとツイートされていましたよね。

田島:あれはヤバいです。Netflix見ながら描いたりしちゃうんでダメですよね(笑)。

──書き心地も、手描きと遜色ないですか?

田島:ちゃんと自分にあったアプリを見つけられると、遜色はないですね。自分もProcreateとか、色んなアプリ試してみたんですけど、実は一番いいのが純正のメモアプリなんです。線の質感が本当に鉛筆みたいなんですよ。

──「あとこれができれば、iPad Pro完璧なのに!」みたいなものはありますか?

田島:スカルプティングができるプロ用の3Dモデリングアプリがあったら完璧ですよね。今でも、簡単なスカルプティングができるアプリがあったり、パソコンの3DソフトをiPadにミラーリングする方法はありますが…。独立した3Dモデリングアプリが登場して、iPad Proだけでモデリングができればもっと楽になるのに、と思いますね。

──たとえばZBrushがiPadで動くとして、パソコンと比べて使いにくくはないですか?

田島:普段は液タブとスタイラスで操作しているんですけど、Apple Pencilもスタイラスとしてのクオリティが凄く高いので、使いにくくはないと思いますよ。あとはアプリさえ独立して動けば、って感じですね。

ZBrushはショートカットもあんまりなくブラシを変えるくらいなので、僕はiPad Proでも使いやすいと思います。早く対応させてほしいですね。

ロボットに仕事を取られても、人間のなかで頂点を目指す

── 田島さんは今年27歳とのことですが、世代的にテクノロジーの時代で育っていますよね。すでに仕事の選択肢としてCGというものがあったし、ソフトウェアの勉強もYouTubeにチュートリアルが上がっていて無料でできましたし。CG業界では、これからもテクノロジーの恩恵がどんどん大きくなると思うのですが、それは田島さんの仕事にどのような影響を与えると思いますか?

田島:最近、VRで空間に絵を描いたり、AIを使って自動で色をつけたりできるツールがあるじゃないですか。そういうのを見ていると、アイデアを形にするのがどんどん簡単になってきていると感じています。

この流れが今後進行して、たとえば何かを頭に装着するとアイデアが絵になるみたいな技術ができてくると、優れたアイデアを出せる人が強くなると思います。

そうなってくると、もっと色んな人が映画の制作に参加できるようになりそうですよね。技量はなくても、アイデアさえあれば参加できる時代は来るんじゃないのかな、と思います。

──ではテクノロジーが進化して、もしそういう時代が訪れたとき、田島さんならどんな努力をしますか?

田島:うーん。どこまで技術が進歩しても、結局、人間は人間が作ったものを求めそうな気がするんですよね。人間がロボットに嫉妬するタイミングがどこかで来ると思うんです。そうなったときのために、人間のなかで頂点を目指せるように頑張ればいんじゃないですかね。

どれだけ技術は進歩しても、デザインする人間は必要なんじゃないかなって思います。なので、技量だけは衰えないように勉強しないといけない危機感はありますね。 今でも常に絵の上達を意識して制作しているので、変えずに続けていきたいです。

──田島さんがこれから挑戦したい新しい領域やジャンルはありますか?

田島:実は、まだ何かは言えないんですけど、今の自分がやっていることと全然違う制作に挑戦しています。それは映画とはちょっと違いますし、モンスター系でもないですね。

──自分で映像作品をゼロから作るみたいな?

田島:それと近いかもしれません(笑)。まだ何かは言えないのですが、楽しみにしておいて下さい!



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Source: Kouji Tajima Art

(山本勇磨)

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