なんだか話がおかしなことになってきました…。
カナダの少年が星座の導きにより未発見のマヤ文明都市を発見し、カナダ宇宙庁や大学教授も彼の研究を後押ししたのが手伝って大きな話題となったのも束の間。この道ウン十年の文化人類学者たちに言わせれば、そんな突飛な理論はありえないとあっさり否定されてしまいました(とはいえ、15歳の少年が自分の好奇心と行動力でここまで研究をすすめたことに、彼ら学者も感心しました)。
学者たちは「衛星写真に写っている長方形の緑の土地は、トウモロコシ畑の耕作放棄地か古いMilpa(焼畑)だろう」というので意見が一致してはいます。ただ問題は、彼らが誰も現地に行ったことがなかったということです。
現地に行った人は「マリファナ畑かもしれない」
そこで、実際にそのエリアに行ったことがあるという、カリフォルニア大学サンディエゴ校メソアメリカ考古学研究室の文化人類学者Geoffrey E. Braswellさんに話を聞きました。
「私たちはその場所に行ったことがあります。うちの学生たちもよく知っていますが、あれはマヤのピラミッドではありません」
Braswellさんと研究チームは、このメキシコの辺鄙な地方に詳しいといいます。というのも、彼らが取り組んでいる考古学の共同研究プロジェクトがこのエリアで行なわれているためです。

少年が提示したふたつの画像のうちひとつには、干上がった沼地の南東の端に2つの長方形が見られます。Braswellさんによれば、これはメキシコのカンペチェ南東部にあるエル・シバロン湖(Googleマップ:N 17°57′05″ W 90°10′22″)だそうです。そして彼は、この2つの長方形がマヤのピラミッドではなく、マリファナ畑かもしれないと言います。
「耕作放棄されたトウモロコシ畑か、今もマリファナが栽培されている土地でしょう」と彼はギズモードに話しました。実は、この近辺ではマリファナ栽培がよく行なわれているそうなんです。

そしてもうひとつの画像では、エル・マンギート湖の500m北にある乾期の小さな湿地が見られます(Googleマップ:N17° 53’ 44” W 90° 6’ 35”)。あくまでこれは古代のピラミッドではないのですが、植民地の遺跡があるそうです。
「なんとなくこの画像を見たときに見覚えがあるなと思いました。それからGoogle Earthで確かめたんです」とBraswellさん。「それから『ああ、ここは知ってるぞ!』となりました」
実は古くから知られていたエリアだった
こういった場合のリモートセンシングにおいて大切なのは、「グランド・トゥルース(現地や実物の知見)」だとBraswellさんも言います。
「宇宙から撮った写真を見ただけでは、それが何であるかは神のみぞ知る、というわけです。実際に現地に行って、自分の目で見なければならないのです」と彼は語ります。「10回行って9回はハズレ。時たま、何かしらの発見があります。私たちがあの場所に行ったことがあったのも、ほんの偶然にすぎません」
重要なのは、考古学者たちはあのエリアを1930年代から調べていたということです。実は、ユカタン半島の広大なジャングルは何十年間も空撮されてきていたのです。ほかでもない、チャールズ・リンドバーグ飛行士もその1人でした。「かなり長い間にわたって知られている事実です」と、Braswellさんは教えてくれました。
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(斎藤真琴)